第13話

 今、私はアラン殿下の後に付いて歩いている。やはりライアン殿下のお兄様だけあってとても格好がいい。この美貌では令嬢達も放ってはおかないと思う。


確かアラン殿下は既に婚姻されている。記憶によれば、5年前位に婚姻したはず。私は興味が無かったせいか国中でお祝いしたなって位の記憶しか無い。


「リア嬢、君は光魔法が使えるのだったね。今、各騎士団へ挨拶に向かっているんだけど、明日からはカルサルの補助を午前中はしてもらう。午後は魔法の練習と聞いていたが、魔法練習は騎士団の治療を兼ねていると思ってくれ。君は欠損も治せるのか?」


「欠損を治す事は可能だと思います。ですが、実際に欠損患者と接した事が無いため実践は出来ていません。そして欠損を治すまでになると魔力消費も激しく、1日3人程度が限度だと思います。殿下は治したい希望の方がいらっしゃるのですか?」


「あぁ、助かるよ。我が師である元騎士団団長サイモン殿だ。彼は左足を魔獣討伐で無くして以来、団長職を降りて後進育成に努めて貰っているんだよ。彼以外にも怪我で勇退した騎士は多い。彼等を優先的に治療して貰いたいんだ。


騎士団は常に怪我人で人員不足だし、光魔法の術者が希少な今、怪我しても治して貰えないと成り手が減って困っていたんだ」


 確かに光魔法の術者は少ない上に貴族程の魔力量を持つ人は数人程度。怪我人の治療で欠損までを治す事が出来るのは現在、教会の総司祭様と国を代表する治療師であるアニマ様位だったかな。


勿論魔力が足りなくても何度も治療を続けて少しずつ欠損部位を減らしていく方法で完治させる事はできるのだが、怪我人も多く、欠損した者の治療は後回しになるのが現状なのだ。


 アラン殿下と話をしながら着いたのは騎士団棟。総本部と書かれたプレートが頭上で輝いているわ。噂では鍛錬場の見学スペースに令嬢達が群がっているのだとか。私も筋肉美を見ながらキャッキャしてみたい気もする。


「リア嬢、こっちだ。まずは挨拶だよ」


 連れてこられたのは会議室。『入るぞ』の声でアラン殿下が部屋に入ると、そこには20人位いるであろうかと思われる人々が座って皆こちらを見ていた。こ、怖いわ。国中の猛者が一斉にこっちを見ているんだもの。


すると、アラン殿下が私を彼等の前に押し出す。


「彼女が新しくカルサルの元に来た王宮魔導師見習いのリア・ノーツ侯爵令嬢だ。皆も話は知っているだろうが、彼女は光魔法の使い手だ。普段は午前中は魔導師として、午後は騎士団に治療師として来られるようにカルサルにした。


まずは怪我で勇退した者達の治療を優先的に行って行く予定だ。分かっていると思うが、リア嬢はまだ14歳という歳だ。婚約者も居ない。良からぬ虫が付かぬように気をつける事。良いな。リア嬢、挨拶を」


 先程の話をする殿下と違って王太子としての殿下は流石次期国王となる人。ガラッと雰囲気まで変わったわ。私は沢山の視線を一気に集めて足はガクガク、手の平は汗だらけ。


「リア・ノーツです。王宮魔導師時々治療師を目指しています。未熟な面も多々あるかとは思いますが、一生懸命頑張りますので宜しくお願いします」


 なんとか自己紹介を終えたけれど、心臓バクバクで怖かった。なんとか受け入れてもらえたような気がする。多分。


「俺、アベル・サウラン!21歳。第5騎士団副団長。彼女募集中!リアちゃん宜しく」そう言って立ち上がったアベル副団長。何だか大型のワンコみたいな人だわ。


「リア嬢には追々自己紹介をしてくれ。今日はまだ寄る所がある。明日からリア嬢は午前は魔導師棟、午後から第一騎士団治療室に配属する事になる。以上だ」


 アラン殿下の言葉と共に団長、副団長達が立ち上がり礼をしている。凄いわ。団長達の一糸乱れぬ礼にとっても興奮してしまう。制服フェチに目覚めてしまうかもしれない。


 因みにファルセットお兄様から聞いた話では第1騎士団から第10騎士団まであって第1騎士団は陛下直属、第2~5騎士団は王族や王宮の護衛や警備。主に貴族からなるエリート集団なのだとか。第3騎士団だけは女騎士のみで編成しているらしい。



 私が興奮しているのを見ていたアラン殿下は苦笑しながら治療室まで案内してくれた。


「ここが第1騎士団の治療室だ。医務官のモーラは長年ここで治療を行っているから何でも聞いてみると良い」


そう言って紹介されたのが白髪の優しげなおじいちゃんといった感じの人だった。


「ワシがここの医務官を務めているモーラだ。宜しくな、お嬢ちゃん。丁度ワシの孫位の年齢なのに働くとは優秀なんだのぉ」


「リア・ノーツです。明日の午後から宜しくお願いします」


私はモーラ医務官から部屋の説明を受けた。一通り説明を受けると殿下は執務に戻ると言って戻ってしまった。私もモーラ医務官とお茶をした後、医務室を出るとそこには騎士の1人が待っていてくれたようで家までしっかりと送られて帰りました。理由を聞くと、まだ攻撃魔法も使えない光魔法の魔導師見習いの少女は保護の対象でもあるそうな。何だか申し訳ない。


早く王宮魔導師になれるよう頑張ります。

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