転生した令嬢は今度こそ幸せを掴みます!

まるねこ

第1話 プロローグ

「フィアン・ラストール、貴方はリディス・サルタンを妻とし、生涯愛する事を誓いますか?」


「・・・はい」


「リディス・サルタン、貴方はフィアン・ラストールを夫とし、生涯愛する事を誓いますか?」


「はい」


 あぁ、やはり私は生涯求められる事は無いのね。フィアン様の視線の先には白と淡いピンクのレースをあしらったドレスを着たアイラ嬢。


今日は人生で一番私が輝く日。ウエディングドレスを着ているのは私。



・・・けれど、決して私を見る事はないのね。


もう、いいわよ、ね。



 婚姻の署名を終え、出席者の方を見渡す。


温かな拍手の中に歪んだ強い視線が一つ。


私は視線を無視して一歩前に出る。


「フィアン様、ご出席の皆様方、本日私達の婚姻の儀にお集まり頂き有り難う御座いました。私、リディスは本日、夫となりましたフィアン様を、ずっとお慕いしておりました。


フィアン様は私に嘘でも妻として誓ってくれた事、嬉しくて、私はっ、本当にっ、幸せな気持ちになり、ましたっ。けれどっ」


涙が頬を伝い、声が震えて上手く声が出せない。


 会場に居る人達は何事かと口を閉じ、私に視線を向けている。


「式のひと月前にっ、突然。フィアン様には、真実の愛、愛するアイラ様が出来たと。既に御子までいると。私はっ、ただっ、フィアン様と温かな家庭を作りたかった。慈しみ合える仲に、なりたかった。


お父さんとお母さん、みたいなっ、仲良し、夫婦になりたかった。けれど、私は二人にとって邪魔者でしか、あり、ません。フィアン様から御子の話を聞いた時、辛くて、苦しかった。嫉妬に身を焦がしっ、どうすれば良いのか分かり、ませんでしたがっ、でも、今も、見つめ合う2人をっ、想い合う2人をっ、引き裂く妻にはなりたくありません。


どうか、、どうか私の代わりに、そこに居るアイラ様を、女神シュエル様の元、ふ、夫婦として迎えてあげて下さい」


 私は涙ながらに言った。そしてカタカタと震える手で隠し持っていた小さなナイフを取り出し、自分の胸に向け振り下ろす。痛みの衝撃で私の身体は床に落ち、赤一色に染まり始める。


あぁ、誰かが叫んでいるわ。


もう、何も聞こえない。


もういいの、痛み、苦しみや嫉妬や憎しみの感情に身を焦すのは辛すぎる。もうあの二人を見ていたくないの。


辛いの。


生きていたくない。


さよなら、愛しい人。


「フィアン様、さよな、ら」

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