第42話 皆でお泊りするようです 2

「アインス達って、そんな年だったんだなー。俺、アインス達のことさえ知らなかったよ」


 きちんと向かい合う、なんて偉そうなことを思っても、この世界に来た時からの付き合いのアインス達のことさえ知らなかったのは、さすがの俺も無関心過ぎたかと反省した。

 俺は今まで目の前にある物の来歴を考えるより、ある物が使えるなら使うし、使えないならそのまま放置するか一大決心して捨てるか、といういきあたりばったりのような暮らしをしてこの年まで来てしまったから、とりあえず死んだこともこの世界に来たことも仕方ない、と考えることなく流していただけなのだ。


 そんな俺がどうして神獣や幻獣の子供を預かることになっているのか、今もって本当に不思議だ。


『まあ、イツキが最初に来た時はまだ話せませんでしたし、それにイツキも状況が全く分かってなかったですしね』

「ああ、今でも自分の状況は分かってないけどな!でも、雛だったドライ達がどんどん大きくなったから、皆そんなもんだと思ってたからさ。そんなに成長に時間がかかるとは思わなかったんだよなぁ」

『ハッハッハー!イツキ!俺達もこんなに早く成長できるとは思ってなかったぞーーー!俺達だって、イツキと生活してから驚くことばっかりだったからなーー!』


 ああ、そうだよな。十年かけてゆっくり成長してたんだから、この一年でここまで成長した当の本人だってビックリだよなー。


「なあ、そこら辺はどう思っているんだ?神獣の成長としては、本来はゆっくり時間を掛けて成長するものだったんだろう?」

『ああ、そうだが成長してうれしくない、なんて思う訳ないだろう?俺はのんびり成長するより、こうして日に日に成長を実感できる今に、満足しているがな!』


 ガッハッハ!と笑うツヴァイに、まあ、ツヴァイはな、と思っていると。


『本来神獣、幻獣は自分の守護する土地を出ませんから、こうして皆で集まる、なんて聖地での会合くらいでした。でも今、子供達が集まって過ごしていると、こういう刺激も成長に繋がるのだな、と実感していますよ。種族は違えど、お互いを意識もしますしね』


 そうだよなぁ。最初は甘えただったロトムも、他のケットシーやクー・シーの集落の子供達と一緒に遊ぶようになって、一気に俺とか言い出して成長したしなー。保育園とかも、確か同世代の子供と一緒に過ごすことで、自分のことを意識し出して自我が確立されていくんだよな。それと同じ感じかな。


「まあ、それで皆が喜んでくれるんならいいんだけどな。ただ、ライのように無理に成長しよう、と意識しすぎてないかは心配だな……」

『そこは皆で気に掛けるしかないですね。本当にここに来ている子供達は、今までではありえない程に皆成長が早いですから。ただ、ある程度身体が成長すると、力が馴染まないとそれ以上は成長しなくなるので、そろそろ止まる子も出て来ると思います。そういう子はイツキも気に掛けてあげて下さいね』

「そうだな。成長しないのが普通なら、急いで成長しなくても大丈夫だって、安心させないとな」


 そう改めて決意し、今日はせっかく皆でお泊りなんだから、寝る前に話をしてみよう、と思った。



 そうこうしている間に皆が起きてきたので、午後は広場から聖地へ続く道の雪かきをした。

 その途中で興奮したハーツのかいた雪が皆にかかり、気づくと雪合戦のように雪のかけ合いになったりしたが、皆で楽しく作業を続けた。

 ライも楽しそうに笑っていたから、ちょっと安心したよ。


 そうして夕食もわいわいと皆で食べ、そして夜。

 ハーツは興奮しすぎたのか夕食を食べた後は寝床のかまくらに一人向かって寝てしまったので、皆で家へと入って寝る前に団らんをする。


 ドワーフ達がしてくれた家の改装で隙間風が減ったお陰で、アインス達に寄り添っていれば寒いということもない。

 俺を座って丸まったドライに寄りかかって座り、隣にロトム、膝の上のクオン、そしてドライの上にライがとまり、ドライの両脇にアインスとツヴァイがいる。


「ロトムも大きくなったよなぁ。最初はまだ歩くのもやっとだったのに。もう抱っこできないのが残念だよ。なあ、ロトム。無理はしてないか?」


 聖地に通い始めた頃は、ロトムを抱いて行くことも多かったのに、今ではもう大型犬ほどに成長している。

 思い返しても、しっかりと歩き始めてから、あっという間に大きく育ったのだ。


『無理、してない』『成長、うれしい』


 そっとすり寄って来た双頭の頭をそっと撫でる。本当にいつの間にかこうして撫でる頭も大きくなった。


「そうか?ロトムはもっともっと大きく成長するだろうけど、俺が寂しいからゆっくりと大きくなってくれな」

『イツキ、寂しいの?』『大きくなった方がいいだろ?』

「いやいや、だって、ロトムの子供時代は今しかないんだぞ?そりゃあ訓練は大事だし、成長するのも大事だろうけど、でも、そんなに急がなくてもいいんだぞ?」


 俺には神獣や幻獣の跡継ぎがいない、ということがこの世界にとってどれだけ重要なことかは分からないが、皆には無事に成獣して欲しい、とは思っている。でも、それと子供達が無理して成長することとは違うと思うから。


『いいの?私がずっとこうしてここに来て甘えてても?』

「お、クオン。いいぞ。俺は皆がいてくれると楽しいし、クオンがあっという間に来なくなったら寂しいぞ?だから自分のペースで一つ一つ訓練してできるようになって、ゆっくりと成長して行ってくれな。慌てる必要はないからな?」

『キューーン。うん、分かった!』


 うれしそうに胸にすり寄るクオンを撫でながら言うと、肩にそっととまって頬にすり寄って来たライも撫でる。ロトムも更にピッタリと寄り添ってくれた。


「こうして皆で寄り添って、楽しみながら成長して行けたら、それが一番だと俺は思うぞ」


 こうして皆でくっついていると、家族になったかのようで温かい。今、こうして皆で種族関係なく寄り添っていられることこそが、奇跡みたいなことで何よりも貴重なことなのだろう。

 だから、世間と隔絶されたこの場所では、まどろむように皆がゆったりと過ごして欲しい。


 それから甘えて来る皆を存分にもふもふしつつ、ゆっくりと冬の長い夜を温かく過ごしたのだった。






****

なんか文章が纏まらず、とりあえず迷いましたが更新しておきます。

後で少し修正するかも?(しない可能性の方が高いですが)


急な暑さの戻りにまだぐったりです……

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>


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