飛花落葉(ひからくよう)
日田藤氏
反乱編
誕生
1
「ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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女性の悲鳴が聞こえてくる
「奥様、もうすぐですよ」
女性は妊娠している
お腹は大きく、今日、出産の日を迎えている
「ふん!」
1人の妊婦がお腹に力を入れる
「頑張ってください、奥様!」
助産師が声を掛ける
「ひっひっふうぅ~」
助産師は出産する時の呼吸を促す
出産する時の呼吸をラマーズ法と言う
「ひぃひぃふっふっふうう~」
奥様と呼ばれた妊婦も出産する時の呼吸をする
「もうすぐですあと一息ですよ」
妊婦は口の中にある布を思いっ切り噛み締めて、力を入れる
「うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううあううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううああああああああああううううううううううううううんんんんううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????????????????????????????????????????????????????????????????」
痛みのあまり妊婦が叫ぶ
「奥様、ひっひっふうぅ~です」
助産師が妊婦に出産する時の呼吸をして見せる
「鼻から息を吸って、口から吐くのです」
この、ひっひっふうぅ~でなじみ深い出産する時に妊婦がするラマーズ法が発見されたのは、西暦1972年の事とされており、日本に伝わったのが西暦1960年代頃と言われている。そのため作中の時代にこの呼吸方法なまだなかったとされている
「おんぎゃあぁ~!?おんぎゃあぁ~!?」
因みに現代では息を吸ってゆっくりと吐くソフロロジー法が主流となっている
この瞬間、一つの生命が誕生した
「奥様!元気な男の子ですよ!」
生まれたばかりの赤ん坊は優しく母親に抱きしめられた
2
若い青年が部屋を歩き回る
「まだか!」
この青年の名前は三河直哉、三河家の現当主である
「まだ生まれんのか?」
三河直哉はもうすぐ父になろうとしている
「おんぎゃあぁ~!?おんぎゃあぁ~!?おんぎゃあぁ~!?」
隣りの部屋から、産声が聞こえてきた
「生まれたか!」
三河直哉はすぐさま助産室へと向かう
「おめでとうございます。お館様、元気な男の子です」
三河直哉は妻と生まれたばかりの我が子の横に座る
「でかしたぞ!公(きみ)!」
三河直哉は妻である公子に称賛(しょうさん)の言葉をおくる
「抱いてやって下さいませ」
三河直哉は赤ん坊を優しく抱きかかえる
「うむ!元気な男(おのこ)だ!」
三河直哉は赤ん坊の顔を覗き込む
「貴方様にそっくりにございます」
公は優しく微笑(ほほえ)む
「お前の名前は太朗(たろう)だ」
3
「敵襲(てきしゅう)にございます!」
筋肉質で強面(こわもて)な青年である肥後間作が敵の襲来(しゅうらい)を知らせる
「敵はいかほどか?」
二階家村は敵について質問する
「上下(かみしも)軍にございます。敵の数はおよそ、100~120程かと!」
上下家は二階家の宿敵に当たる家である
「またあいつらか!」
二階家村は呆れたように首根っこをかく
「三河殿、陸奥殿、肥後殿は敵を迎え撃て!」
4
三河直哉は出陣前に妻と息子の元に駆け寄った
「出陣の命(めい)が下った行ってまいる」
三河直哉は生まれたばかりの我が子である太朗の頬(ほほ)を優しくなでた
三河直哉は立ち上がり、鎧(よろい)に着替える
「者共(ものども)!出陣じゃ!」
ブウォ~ン!!
三河直哉は自(みずか)ら法螺貝(ほらがい)を鳴らす
三河直哉、陸奥守吉、肥後間作は戦場へと赴(おもむ)く
5
「出来る限り、食材を奪え!」
敵が襲来してきた目的それは、食料の強奪(ごうだつ)だった
「その米が無いと妻や子が飢えちまう!」
ボロボロの青年が足軽の右脚をつかむ
「え~い!しつこいぞ!」
米俵(こめだわら)を持った足軽は青年の背中に槍(やり)を突き刺す
「あんた!」
青年の妻と思わしき若い女性が夫に駆け寄り
「おっ父(とう)!」
青年の子供と思わしき幼い少年が父に駆け寄った
「お主、中々のワシ好みじゃ!」
足軽は農家の青年の嫁に手を伸ばす
「これ以上!近寄るな!」
若い女性は鎌を構える
足軽は槍を突き刺す
その矛先は、幼い少年だった
「これで、未練は無かろう」
足軽が突き刺した槍の先には幼い少年がいた
「おのれ!」
若い女性我が子を殺された怒りで夫と幼い息子を殺した足軽に鎌で斬りかかる
足軽は槍から手を放すと刀で斬りつけた
「せっかくの好みだったのにもったいない」
家族を惨殺(ざんさつ)した足軽は残念そうに農家を出る
どさ
農家を出た瞬間、何者かに矢で射抜かれた
6
上下軍の陣には大量の食糧が置かれている
「鎌田様、今回は大量にございます」
今回の略奪(りゃくだつ)を指揮(しき)した鎌田一平は満足そうに頷(うなず)く
「うむ!よくやった!」
鎌田一平は上下家の重臣である
「申し上げます!二階軍がこちらに迫っております!」
家来の一人が知らせてくる
「目的は既に果たしておる!撤退(てったい)せよ!」
鎌田一平は撤退(てったい)することを選んだ
しばらくして、三河直哉、陸奥守吉、肥後間作が到着した
略奪に夢中(むちゅう)のになっていた数人を除いて上下軍は撤退した
「遅かったか!」
7
翌年
「国破れて山河在り。続きをどうぞ」
三河直哉は、10歳前後の少年に勉強を教えている
「国破れて山河在り城春にして草木深し」
10歳前後の少年が読む
「ではこの詩は誰が詠んだ句ですか?」
「唐(から)の国(くに)の詩人である杜甫(とほ)です」
10歳前後の少年が答える
「流石でございます。!次男様!」
三河直哉は、10歳前後の少年を褒める
「では、杜甫が詠んだこの詩は何という詩ですか?」
「春望です」
次男は即答する
「流石です!次男様!ではこの詩の意味を答えて下さい」
次男は考える
「戦で国が破れて、山を越え川を渡り月日が流れやがて春が来る頃には城に草木が生い茂る様子」
次男の回答は当たらずも遠からずである
「流石でございます次男様!」
三河直哉は、10歳前後の少年を褒める
「この詩は、都は戦乱で荒れ果ててしまうも山や川は変わらぬまま、 城壁にも春が訪れて、草木が生い茂り、混乱した世の中を嘆き、離れ離れになった家族を案じながらも何もできないままに年老いていく我が身を悲しんで詠んだ詩と伝えられております」
この「国破れて山河在り城春にして草木深し」は杜甫が詠んだ詩、春望(しゅんぼう)の最初の句であり、安禄山の乱で捕虜となった杜甫が長安の春の光景をを眺めながら詠んだ詩とされている
「ところで次男様はいくつになりましたか?」
「うむ!9歳(ここのつ)じゃ!」
「大きくなられましたな」
三河直哉はしみじみと次男を見る
「次男様、春望(しゅんぼう)を今一度よんでくださいませぬか?」
国破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別鳥驚心 烽火連三月 家書抵万金 白頭掻更短 渾欲不勝晉
次男は目を通す
「国破れて山河在り 城春にして草木深し 時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 烽火(ほうくわ)三月に連(つら)なり 家書万金(かしょばんきん)に抵(い)たる 白頭(はくとう)掻けば更に短く 渾(なら)べて晉(しん)に勝へざらんと欲(ほっ)す」
注意・晉(しん)は正確には「晉」ではなく違う漢字です。
「流石です!次男様!」
8
「三河殿、次男の様子はどうじゃ?」
40歳前後くらいの壮年男性が三河直哉に声を掛ける
「お館様!」
三河直哉は頭を下げる
「はっ!真面目で、覚えも良くとても優秀にございます」
三河直哉は次男の現状を報告した
「そうか!それは将来が楽しみじゃ!」
それを聞いた二階家当主である二階家村はご満悦となった
9
「これは、これは、お館様と三河殿」
50歳過ぎた初老の男性が声を掛けてきた
「石垣(いしがき)殿ではないか!」
この如何にも歴戦の猛者と言える雰囲気を醸し出している初老の男性は石垣原治郎と言う
「石垣殿、長男の様子はいかがかな?」
二階家村の嫡男、二階安村のもりやくである
「ここからが本題じゃが、我が二階家は上下家と同盟を結ぼうと思うておる
上下家と二階家は土地を巡り争う中である
「確かに、周りは敵だらけ、味方は少しでも多い方がようございます」
三河直哉はお館である二階家村の案に賛同する
「私(わたくし)めも上下家との同盟は二階家に有益な物になるかと」
石垣源治郎も賛同する
「我が嫡男である安村と上下式丈の妹である公子殿(きみこどの)を婚約させようと思うておる」
二階家村は三河直哉と石垣源治郎を見つめる
「石垣殿、交渉を頼んだぞ」
二階家村は長男の補佐枠である石垣源治郎に交渉約とした
10
高見城
「お館様、二階様からにございます」
小姓と思わしき少年が上下式丈に手紙を渡す
「二階殿の嫡男と我が妹との婚約か」
上下式丈は手紙を読む
「確か、二階殿の嫡男には、既に正室がいたはず」
上下式丈は状況を整理する
「鎌田よ二階殿の嫡男を探ってまいれ」
上下式丈は鎌田一平に二階安村の偵察を命じた
6
「長男様、武芸(ぶげい)の稽古(けいこ)の時間ですぞ」
石垣源治郎は二階家村の嫡男である二階安村を呼ぶ
「長男様、ここに居られましたか」
二階安村はお堂で禅(ぜん)を組んでいた
「爺か、直ぐ行く」
二階安村は立ち上がる
「すまぬ、少し集中していた故」
二階安村は一言謝る
「あの離縁は貴方様のせいではございませぬ」
石垣源治郎は主である少年の何かを感じたのか二階安村をフォローする
「あの女は間者(かんじゃ)にございました」
7
翌年
「石垣殿、遠路はるばるよくぞ参ってこられた」
上下家家臣である鎌田一平が出迎える
「長旅で疲れたであろう、ごゆるりと休むがよい」
上下式丈は客人である三河直哉を労(ねぎら)う
「それでは、石垣様、お荷物はこちらに」
小姓(こしょう)と思われる少年が石垣源治郎の荷物を預かる
「それでは、こちらの部屋でお待ちください」
石垣源治郎は案内された部屋に入る
8
高見城城主である上下式丈が姿を現す
「石垣殿、長旅ご苦労であった」
上下式丈は石垣源治郎にねぎらいの言葉を入れる
「勿体なきお言葉にございます」
石垣源治郎は深々と頭を下げる
「我が妹、公子(きみこ)と長男殿との婚姻であったな」
公子と安村は要するに許嫁(いいなずけ)である
「左様(さよう)にございます」
上下式丈は考える素振(そぶ)りを見せる
「石垣殿との同盟は我らからも願っても無い事」
上下式丈が立ち上がる
「二階殿の嫡男である長男殿と、我が妹である公子(きみこ)との婚約を約束しよう!」
上下式丈はその場を去った
「はっは~ありがたく存じます。」
1
翌年
「いよいよ、我の妻が嫁(とつ)ぎに来るのだな!」
20歳過ぎの青年は廊下を歩き回る
「長男よ少しは落ち着かんか!」
青年の名前は二階安村、二階家の次期当主である
「しかし、父上!前妻(ぜんさい)とは離縁(りえん)になった故(ゆえ)」
青年は言葉を止める
二階安村は内心、この結婚が不安なのである
「長男よ、前の嫁との離縁は、我が二階家とお主の嫁の家が敵対したためであり、お前は何も悪くない」
二階家村は結婚を前にした我が子である二階安村を励ます
「お前は我が二階家の次期当主であるぞ!もっとしっかりせんか!」
二階家村は二階安村の背中を思いっ切り叩く
バン!
「痛(い)て!?」
二階安村は自(みずか)らの背中をさする
「親方様のおっしゃる通りにですよ!」
二階家村と同世代と思われる壮年の女性が話に割って入る
「乳母上(うばうえ)」
その女性は二階安村の乳母(うば)である
つまり二階安村はこの女性の乳を飲んで育ったのである
二階安村の乳母である兎羽殿(うばどの)はお世辞にも整った顔ではない
分厚いたらこ唇に、団子鼻と豚鼻を合わせたような鼻、極端に小さい目
失礼になるが、はっきり言ってブスである
「もっと自信を持ちなさい!」
しかし心は川の水のように綺麗(きれい)である
「はい!乳母様!」
2
「いよいよ祝言の日じゃな」
二階安村は花嫁が来るのを今か今かとそわそわする
「公子殿ご到着(とうちゃく)にございます」
花嫁である上下(かみしも)公子(きみこ)が屋敷(やしき)の中に入る
公子は体の震(ふる)えを誤魔化すように歯を食いしばる
「そなたが公子殿にあらせられるのか?」
声を掛けて来たのは20歳過ぎたくらいの青年だった
その青年は公子の婚約者である二階安村だった
「とても美しゅうござる」
二階安村は公子の美しさに見とれていた
「では祝言の場にて、またお会いしよう」
3
祝言の場には多くの二階家家臣が集まった
次男の守役(もりやく)である三河直哉もその一人である
守役とは言わば教育係と護衛を兼任している役職である
11月23日正午
祝言が行なわれた
「長男様、この度(たび)のご結婚おめでとうございます。」
祝言の仲人言わば媒酌人である石垣源治郎が挨拶をする
祝言(しゅうげん)は無事に行われ修了した
「私はここに居てよろしいのでしょうか?」
安村と二人きりになった公子は重たい口を開く
「何故、そのようなことを申す?」
二階安村は公子に疑問を投げかける
「私の父はあなた達の土地を荒らし、食材(しょくざい)に金目の物を数多く盗んできました」
公子は父である上下式丈のした事を気に病んでいるようだ
「そなたは、我の妻なのだそれ以外にそなたがこの場所にいる理由などあるまい」
二階安村は優しく話しかける
「確かにそなたの父がした事を許せるわけではない、だがそれはそなたのした事ではあるまい」
二階安村は公子の頭に右手を置き優しくなでる
「そなたは気に病まずともよい、そなたは我の妻なのだそなたはここに居てよい」
公子は重荷(おもに)が取れたかのように大粒の涙を流した
父親がしてきたことに対して思うところがあったのだろう。公子は二階安村の胸に顔をうずくめる
泣いている顔を隠すかのように
こうして二人は夫婦となった
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