2章 にぎやかなお客様の来訪です

第1話

「ふははははは!!ついに、ついにこの時がやってきた!落ちこぼれ、落ちこぼれといわれてきたこの僕だが?今日という今日こそは目にもの見せてやるんだ!そう、僕はいずれ神になる男!今度という今度こそ叩きのめしてやるぞ、堕天使、ウェディルめ!!ふはーっはっはっは!うわーっはっはっは!!」


シュベール公爵邸の前で一人高笑いする男。


その男が公爵邸へと足を一歩踏み入れたその時だった。


男の足元が突如として崩れ落ちた。


そして崩れ落ちた地面の下には深い闇に覆われた大きな何もない空間が広がっている。


「な、何でこんなとこに落とし穴があるん、だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


男はとても大きな叫び声をあげながら深い深い落とし穴を落ちていくのだった。





「ん……?誰か入口の落とし穴にはまったな。」


真剣な顔で書類整理をしていたウェディルが突如顔を上げて訳の分からないことを言いだす。


「何やってんですか旦那様。」


「いや、防犯を兼ねて掘ってみたのだ。」


(暇かよ。)


「あぁ、暇なのだ。」


俺、日暮陽14歳の心の突込みに真顔で返してくるのはこの屋敷の主、ウェディル・リッツ・シュベール。


先日、とても怖い女性に命を狙われた俺を助けてくれたまぁ、恩人でもある人物なのだが……――――


今日も今日とて変な奴だ。


「ん……何かが飛んでくるな。」


「は?何かって何が―――――――」


「危ない、ヒナタっ!!!」


突然椅子から立ち上がり、俺の方へと駆け寄ってくるウェディル。


一体何がどう危ないんだ。


そう思った矢先だった。


ウェディルの机のすぐ後ろにあった窓ガラスが

勢いよく割れてた。


何かが部屋に突っ込んできて、それは俺のすぐ目の前まで滑ってきた。


「な、何なんだ、一体……。」


いきなりすぎる事態に驚いていると、滑り込んできた人の体がピクリと動いた。


「なんなんだ……は、こっちのセリフだぁぁ――――!」


滑り込んできた人が叫びながら勢いよく起き上がる。


そして、ウェディルに人差し指を刺した。


「なんっなんだ、この屋敷はっ!!おい、ウェディル!貴様、今日この僕がこの屋敷を訪ねるとちゃんと手紙を送っていたはずだが!?なのに何故、大事な客人である僕が来るというのに、屋敷の門をくぐった矢先、落とし穴はあるわ、

その下に巨大な弾力性のある布はあるわ、どこかともなく出てきた

不思議な板にはたかれてこんなとこまでとばされにゃならんのだぁぁぁ―――!」


「楽しんでもらえたか、アインズ。」


「楽しいわけあるかぁぁぁ!!!死ぬかと思ったんだぞっ!!」


にっこりとほほ笑むウェディル。


そんなウェディルにアインズと呼ばれた男性は怒りの数々を口にする。


つか、マジで何やってんだよ、ウェディル。


(自分で客人って言ってたし、手紙も出してたって事は……客人……なんだよな?)


だとしたらなんて失礼な。


「申し訳ありません、お客様。家主が大変失礼なことを。」


「ふん、全くだ!!!……と、君は誰だい?初めて見る顔だな……。」


ウェディルの行いを謝罪する俺を見てアインズと呼ばれた男性は顎に手を当てて俺の顔を眺めてくる。


俺はにっこりと営業スマイルを浮かべた。


「最近この屋敷で雇われだした執事、日暮陽と申します。」


「ほぉ、ヒナタ……なかなか礼儀正しい子じゃないか……―――――――っ!?」


アインズという男性に挨拶していると何故かそのアインズという男性の顔を右手で掴みだすウェディル。


そして―――――


「おい、お前、何俺のヒナタに笑顔を向けられている。俺だってまだ向けられたことがないのだぞ……?」


意味の解らんいちゃもんをつけだした。


「やめんかっ!!!」


「いっ……!!」


俺はウェディルの後頭部を数日前に作ったお手製のハリセンで思い切りたたいた。


「ひどいぞ……ヒナタぁ……。」


「客人に失礼を働くなよ。」


「こんな奴客人などではない!!……害虫だ。」


「どぉあぁれが害虫だぁぁぁぁぁ!」


(害虫はお前だよ、我らが旦那様。)


客人の声がうるさいので俺は心の中で暴言を吐いてみる。


その俺の暴言はしっかりと伝わったらしく、ウェディルはシュンっとしおらしい態度を見せた。


「お客様、どうぞこちらに。お茶をご用意させていただきます。」


「ん?う、うむ。この屋敷でお茶を出されるなど初めてだな……。」


(……え?)


「毒でも盛るつもりか?いや、流石にいれても痺れ薬ぐらいか……だが、この少年はそのような事をしそうな子にも見えない。作戦かもしれないが?だが、良く知りもしない人間を疑うなど褒められる行動ではない……よし。頂こう、少年!さぁ、案内してくれたまえ!!」


「は、はぁ……。」


すごく覚悟を決めた!みたいな顔で歩き出した客人。


何故そこまでお茶一つで想像できるのだろうか。


いや、過去にきっと何かあったに違いない。


(何やったんだ……?あいつ。)


俺は何故かひどく罪悪感にかられたのだった。

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