第5話
夜の闇が辺りを包み込み、夜も遅くなってきた時間。
俺はリディ様が泊まる事になったため、急ぎ作ってもらったネグリジェに身を包み、リディ様の部屋を訪ねた。
待っていたのは笑顔のリディ様1人だけ。
言っていた通り、本当に二人きりなようだ。
(一応、友達になった事とか飲みに誘われたこととか、ウェディルにいったんだけどな……。)
でも、ここで下手に拒んだら逆に怪しいから十分気を付けて飲みに行って来いといわれた。
そう、それだけしか言われなかった。
(あんな手の込んだ芝居までさせといて、ここにきて二人きりにさせるとか何考えてんだか……。)
まぁ、俺は何処からどう見ても可愛い美少女だ。
襲われることはないと信じたい。
男好きという噂を信じよう。
まぁ、実際は男だけど。
なんて思いながら俺は出されたワインを恐る恐る口に入れる。
(あ、甘い。)
想像していたのと違い、甘くておいしいワイン。
ぶどうジュースのようなそのワインに俺は感動してついつい飲むペースが速くなっていた。
「お酒はーだなんて言っていたのに、結構飲めるのね。」
「はは……みたいです。」
こんなにおいしいものだとは正直思わなかった。
当然ながらお酒自体も向こうの世界とは作り方も違うのだろう。
飲んだことはないけど、ワインは大人の味だと思っていたし、こんな飲みやすいものだと思わなかった。
なんて思っているとちょっと酔ってきたのか、ワインが少し口元からはみ出てしまう。
零れ落ちない様に急ぎ舐めとると俺はまたワインを口に含んだ。
そしてそんな俺をリディ様はじっと笑みを浮かべて見つめていた。
そんなリディ様と俺の視線がぶつかるとリディ様はにっこりとほほ笑んでくれた。
「美味しい?ヒナタ。」
「はい、とっても。お酒って美味しいんですね。」
「そうね、そのワインは特別美味しいの。私の領地では結構ワインを作っているのだけど、その中でもかなりいい出来の奴よ。」
(って、そんなワイン、俺と飲んでいいのだろうか。)
庶民には口にできない味、と言う奴だと思う。
そんな高価な奴を俺なんかに飲ませるなんて、自分で言うのもあれだが、もったいないと思う。
「……ねぇヒナタ。顔が赤いわよ?もしかして暑い?」
「え?あー……少し暑いかもです。」
言われるとどことなくという感じだ。
ワインに夢中で熱い事にすら気づかなかった。
「だったら首元を少し開けたらどうかしら。涼しくなるわよ。」
「ん……そうですね……。」
教えてもらった通り首元のボタンを外す。
何というか、一気に開放的になったおかげで首元が楽になった気がする。
そして、ちょっと暑い俺の為にかリディ様は近くの窓を開けてくれる。
夜風が首筋にあたり、気持ちがいい。
(あ……やば……なんか俺……寝そう――――――)
寝そう。そう思った俺の予想は当たった。
夜風によって急に体温が下がったからか、俺は突然の眠気に襲われ、意識を手放した。
・
・
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「おっと……。ふふっ、危ないわね。」
意識を失ったヒナタは力なく椅子から倒れ落ちかけた。
そんなヒナタをリディが支えた。
その次の瞬間だった。
意識を失ってまるで死体の様に重いヒナタの身体が突然宙に浮き始める。
どうやらリディが魔法のような力を扱っているらしく、リディが人差し指を振って寝台の方向を指すと、
ヒナタの体は寝台へと静かに飛んでいき、ゆっくりと寝台の上に降ろされた。
「あんなに警戒心むき出しだったのに、ここまで緩くなっちゃうなんて、可愛い子。」
ヒナタを寝かせた寝台に歩み寄り、ヒナタのすぐそばに腰を下ろすリディ。
そしてリディはヒナタの首筋をそっと指でなでた。
その指はやがて胸元へと移動し、さらにお腹とどんどんヒナタの体の下部へと移動していく。
「……ふぅん、やっぱりこの子……。ふふっ、一体ディルは何のつもりなのかしら。
でもいいわ。騙されたフリをしておいてあげる。ほんの、少しの間だけね。」
そういうとディルは部屋の明かりを消して、寝台へと寝転がった。
そして、ヒナタと自分に毛布を掛けて静かに眠りについたのだった。
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