第17話 ロリ先生の変装ロリ顔と裏の顔
タクシー呼ばないとなぁと思いながら彼女を探すと、そこには、見覚えのある変装ロリ顔をしている彼女と、いかにもタクシー運転手という感じのおじさんと、その後ろにはタクシーが1台止まっていた。いつの間にか彼女が呼んでくれていたようだ。
「あ、パパだぁ~!! こっちこっちぃ!!」
俺に気付いた瞬間、彼女はそう言ってジャンプした。いや、可愛すぎるだろ。
やっぱりだ。声もロリモードに入っている。可愛すぎによる血圧急上昇で心臓が破裂しないように注意しながら、
「はいは~い」
と言って小走りする。
タクシーの近くまで行くと、運転手のおじさんは、慣れた手つきで後ろの積載スペースを開け、荷物を積むのを手伝ってくれた。
タクシーに乗ると、
「どこまで行きましょう」
と聞かれたので、住所を言うと、
「わかりました」
と返事があって、車が出発した。すると、運転手のお家芸、「雑談」が始まった。
「ずいぶん買われたんですねぇ~」
まぁ、あの量を見たら誰でもそう思うよなぁ。
突然話しかけられたので少々ビビったが、ボロを出さぬよう、できるだけ自然に答える。
「ええ、まぁ。この子が欲張りなもので」
「てへっ」
(うわぁ~~!!! 破壊力!! 可愛すぎ!! 何、殺す気?!)
「結構甘やかしちゃうんですか?」
「まぁ、普段厳しいので、その分欲しい物とか、出掛けたいとかは、聞くようにしてあげてますね」
「そりゃそうですよね。滅多に見ないぐらいお可愛いですもの」
「いやぁ本当。誰に似たんだか」
「...こ、子役とかはされてないんですか?」
「はい、させてません」
「もったいない。そのお顔なら、番組にCMに引っ張りだこでしょうよ。あ、お父さん的にNGって感じですか?」
「そうですね。子供には負担かけたくないですし、一緒に過ごす時間が減るとなると、どうしても」
なんていう、俺にしてはめちゃくちゃうまくできた演技をすること約10分、無事家に着いた。
「料金は?」
「えっと~、100円です」
「いや、そんな訳無いですよ」
いくら世間知らずの俺でも、それが嘘ということぐらいは分かる。
するとおじさんは、そんな嘘をついた理由を話し出した。
「何と言いますか、普段私、お客としゃべらないんですよ。でも、なぜかあなたとなら話せるかもという気がして、久しぶりに話しかけさせていただいたんです。そしたら、すごく楽しくて、なんかこう、久々に仕事を楽しむことができたなぁって思えたんですよね。ですから、感謝の気持ちと言ってはなんですが、そんな感じです」
だが、そうは言っても、100円でなんて申し訳ない。
「いや、でも...」
「いいんです。私がそうしたいんですから。どうか私のわがままを聞いていただけませんか?」
と言われたので、そこまで言われたら仕方ないと、
「では、ありがたく、お言葉に甘えさせていただきます。すみません」
と言い、100円を渡した。するとおじさんは、
「ありがとうございます。是非、またご利用下さい」
と言って、電話番号が書かれた紙をくれた。私の仕事用携帯の番号です、と言って。
タクシーから降り、彼女と2人でおじさんを見送ると、家に入った。
バッグを下ろし、上着を脱いだ彼女は、
「いやぁ、予想よりもうまくいったけど、かなり胸が痛むわね」
と言った。俺が何のことか分からず首を傾げると、
「実はね、変声器を使ってタクシーを呼んだ後、あなたがくるまで時間があったから、せっかくだしタクシー代安くしてもらおうと思って...」
「こんにちは」
「こんにちはぁ」
「タクシー呼んだのはお嬢ちゃんかな?」
「ううん、違うの。パパだよ」
「そっか、パパが呼んだか。今パパはどこにいるんだい?」
「今おトイレだから、まだ来ないよ」
「じゃあ、おじさんと待ってようか」
「うん」
「今日はおもちゃ買ってもらったの?」
「うん。嬉しいけど、あんまり嬉しくない」
「ん、どうしてだい?」
「だって、パパお仕事沢山頑張っておきゅうりょうもらってるんだもん。前にね、何でパパはそんなに頑張るの? って聞いたらね、ママとりこん?しちゃったからって。りこんの意味は教えてくれなかったから、分からなかったけど、そうなんだって言ったの」
「...そうか。お母さんは今どこにいるんだい?」
「外国でお仕事してるの。とってもカッコいいんだよ! 私のお誕生日とクリスマスの日だけ帰ってきてくれるけど、すぐにお仕事に行っちゃうの」
「そっか、それは寂しいね」
「うん。それでね、ちちの日のお手紙で、パパにお金が無いのにいっぱいおもちゃ買ってくれたり、お出かけに連れて行ってくれてありがとうって言ったら、子どもがお金の心配なんてしちゃダメって言われちゃった。でも本当は、私のためじゃなくて、頑張ってるパパのためにお金を使って欲しいの」
「うんうん...お嬢ちゃんは偉いね。ちゃんとお父さんのことを考えてて」
「ううん、本当にえらいのはパパだよ。あ、パパだぁ~!! こっちこっちぃ!!」
「......っていう会話をしてたの。だから最後、料金が破格だったって訳。でも、今回はさすがの私も胸が痛んだわ。あなたが誰に似たんだかって言った時、お母さんを思い出させてしまったと思って言葉に詰まってた時とか、少しでもお金を稼いでほしいっていう願いで、子役っていう選択肢を提案したりしてた時は特に」
という彼女の話を聞いて俺は、彼女がなぜ裏バイトで何千万も稼げたのか、わかった気がした。
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