第28話ー違和感
あれからゴブリン相手に手加減の練習をしながら
基本の型を全て試していくレイルだった。
そして、ようやく終わって休憩していたのだが、
それを見計らってか、楓がまた
「マッピングを始めるわよ!」と言い出した。
(うわぁ…ほんと楓ってスパルタだよ…)
ゲンナリしながらも探知を行っていく。
「はいはーい、……見えざる物よ示せ、エリアサーチ。」
(…ん?何かある??)
2階層には何もないと聞いていたけど一箇所だけ、
一瞬魔力に反応する場所がある事に違和感を感じた。
そして、その場所に行ってみても行き止まりで
何も無いように見えた。
「んー?あれ?何も無いな…確かにここだけ反応があったんだけど。
気の方で探ってみるか…
………ダメかぁ。何も無いや。
ねぇ、楓?ここに何かありそうなんだけど、
魔力には反応したような気がするんだけど、気の方では反応しないんだ。どうしよう?」
「ん?おかしいわね?ここには何度も来てるし、
調べ尽くされてるから何も無いはずよ?
…気にし過ぎじゃない?」
「そうかなぁ…なんか気になるんだよね。
…まぁ、分からないものは仕方ないか。」
「とにかく、これで今日のダンジョン探索は
終了よ!
そろそろ出口に向かわないと外はもう夕方だから
早く帰りましょ。」
レイルは後ろ髪を引かれる思いで踵を返した。
ダンジョンの天井にある
巧妙に隠蔽されたスイッチに気付かずに……
〜高尾山ダンジョン入り口〜
「あ〜っ!やっと出れたわ!
いつものダンジョンより何故かドッと疲れたわー。
どお?レイル。
初のダンジョンデビューは?」
「うん、新鮮で楽しかったんだけど、
実際は命のやり取りをしてるんだよね。
今日は敵があまり強く無かったけど、
いつか勝てない敵が出て来るかもしれないと思っちゃった。
だから油断は絶対しないよ。」
(なんだ。ちゃんとわかってるじゃない。
これじゃ私が付き添いに来た意味が
あんまりなかったかもね。)
「そうよ。いつ何時でも慢心してはダメって事ね。
それがわかってるなら今日の探索は合格よ!
いつかチームでもソロでもダンジョンに挑む時は常に気を張ってないと
……命を落とすからね?わかった?」
「わかった!
まだまだ強くならないと!死にたくないからね!」
「明日から本格的に龍弦老師が帰ってくる2週間後まで毎日ダンジョンに潜って潜って潜りまくるわよ!
あっ、因み行っても9階層までだからね?
10階毎にボスが居るから挑んじゃダメよ?
下手に手を出すと死んじゃうからね?」
「明日から毎日かぁー。
楓ってホント鬼だょね…ブツブツ……」
「ん?…なんか言った?」
「な、なんでもないよ!」
(あぶな〜!
聞かれたら余計にスパルタになっちゃう。)
「ところで、そんなにボスって強いの?」
「…強いなんてものじゃないわ。
基本的に、
ボスは4人1組のパーティが3組居ないとキツいわね
それかクランで挑んで討伐するレベルよ?
たまにソロとか少人数で討伐する人が居るけど稀ね。
って言うか、その人達は人外やら天才、化け物って言われる類の人だから気にしなくてヨシっ!」
その話を聞いてレイルはまだ見ぬ冒険者に憧れを抱くのだった。
「ボスってそんなに強いんだ…
いつか僕も……
ん?って事は弦爺は1人でボスを倒せるって事?」
「……倒せるってものじゃないわよ。
私も一度だけど、ここのダンジョンじゃない
最高難度のダンジョンに同行させて貰ったわ。
そこが魔物氾濫してね、
他にもトップランクの人達も居て鎮圧しに行ったの。
……正直言って、あの方は人を超越してるわ。
刀を一薙ぎするだけで大量のモンスターが消し飛ぶのよ?
闘気を出して歩くだけで地面が陥没するわ、
刀を振ると空間が裂けるのよ?
同行した皆んなは殆ど見てるだけで終わってしまったわ。
極め付けは、氾濫が収まってから
「ワシ、ちょっと最下層まで行ってボス倒してくるわ!」
なんて言って、1人でダンジョンに突っ込んで行ったわ……
暫くして戻って来たと思ったら刀も身体も血塗れで
片手に巨大な龍の頭を持ってたの。
ニコニコしながらね…。」
レイルは驚愕で開いた口が塞がらなかった。
そして興奮し過ぎていた。
(弦爺すげぇーっ!
僕、そんな人に教わってるんだ。
……いつか弦爺に追いつきたいな。
ううん、追い越す勢いで鍛えないと!)
そうしてレイルは今日何度目か分からないほどに
闘志を燃やすのだった。
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