第19話ー麒麟児



レイルの道場見学が終わったその日の夜…



「レイルや…これから会ってもらう女性は千夜と言っての、儂の家内じゃ。

これからは儂と千夜の2人がお前さんの家族じゃ」



「は、はい!不束者ですがよろしくお願い致します!」


龍弦はそれをじぃーっ。と見て溜息を吐いた。


「……はぁ、、、レイルや。

お主は今日から家族なんじゃ。

そんな堅苦しい言葉遣いはやめとくれ、

距離を感じて寂しくなるじゃろ?」


レイルは恥ずかしそうにモジモジしながら返事をする。


「……う、うん…これからよろしく…弦爺…」


「うむうむ。それで良い!では千夜の元に行くかの」



……………

…………

………

……


源邸の玄関に着くと龍弦が扉を開けて家に入って行く。それに付いて行く様にレイルが入る。



「今の時間ならリビングにおるかのぅ?

……千夜さん!千夜さんや!帰って来たぞ〜っ!」



リビングの扉を開けるとそこには凛とした面持ちのお婆さんが晩餐の用意をしていた。



「おかえりなさいあなた。

ご飯の用意が出来たところよ?

あらあら…その子が昼間に言ってた子なのね?

レイルちゃん?だったかしら?

これから貴方のお婆さんになる千夜ですよ。

お願いしますね。」



千夜を見た瞬間何故だか懐かしい感じがして、

レイルは心が温かくなった。



「はい!千夜さん!これからよろしくお願いします!」



「では、晩御飯を食べるとするかの!」



誰かと食卓を囲む事などレイルにはなかったのでとても新鮮に思えた。



「ところでレイルや、お主武術に興味はあるかの?

いやなに、お主がしてみたいと言うなら

道場が終わった後少し教えてやろうかと思っての。

どうじゃ?」


「はい!今日はとても面白かったし、どこまで出来るか分からないけど、してみたいな…

あと、楓と弦爺が纏ってたオーラみたいなのは何??」



龍弦は興奮を抑えられないと言った感じで

千夜は目を見開き、信じられないと呟いていた。



「レイル!お主闘気まで見えるか?!

アレが見えるのは特別な眼を持つ者か、

己自身が鍛錬を重ねてやっとこさ見える代物じゃぞ!」



(……レイルは麒麟児じゃな、、天凛というやつか…これは明日の確認次第では本当に儂の後継者になれるやもしれんのう)




「う、うん、集中して試合を見てたら段々視えるようになって来たんだ…

なんか魔力みたいな感じだけど、

ちょっと違うかったかな?」



「…魔力と言ったか?

それは魔法のエネルギーの事じゃな?

もしかしてレイルは魔法を使えるのか?

こちらの世界では魔法はスキルオーブか先天性でしか獲得出来んのじゃ…」



「魔法じゃないんだけど、魔術なら使えるよ?

簡単な物だけどね…

僕魔力はいっぱいあるみたいだけど出力が全く上がらなくて初歩的な魔術しか使えないんだ…」



龍弦はその言葉を聞いて思案顔で考えていた。



(ふむ…レイルが魔法、、いや魔術か、それの出力を出せるようになるならば武術と魔術の融合が出来るかも知れんな…

一度気の使い方や鍛錬も教えてみるかの。)



「どんな魔術が使えるんじゃ?

見せて貰っても構わんかの?」



「良いよー?でもガッカリしないでね?


……じゃぁ、いくよ!」



レイルは弦爺に今出来る魔術を全て披露する。

その総数、優に30を越えていた…


生活魔術全般、初級魔術6属性、初級支援魔術全般…



「………ど、どうかな?一応頑張って出来るやつ全部してみたんだけど、やっぱり出力が足らないからこれ以上は出来ないみたい…」




龍弦は首筋に冷や汗が流れるのを感じた。


これだけの魔術を使えるなど明らかに異常なのだ。


通常、一流と呼ばれる冒険者の中でもトップに君臨する奴らですら使える魔法の数は10個どんなに多くても20個だ。


レイルを空恐ろしいと感じてしまった。

それと同時にこの子を


       「世界最強」


  にするのも夢ではないと思ってしまった。

一瞬でもよぎってしまった。

思ってしまったのだ、、、

龍弦はもう止まるつもりはなかった。



「……レイルや!

儂はお主を強くしたいと思おとる!どうじゃ?

……強く…なりたいか?」



龍弦のその真剣な眼差しに応えるかのように



「!!!……はい!強く、誰にも負けないくらい強くなりたいっ!」



「…あい!わかったぁっ!!

天真正伝・摩利支天流二十三代当主 源 龍弦が

レイル!お主を強くして見せよう!

儂の指導は厳しいぞ!

耐えるのじゃぞ?

その先にお主の求める強さがある!」


「!!…はい!師匠!僕は頑張ります!!」





「ズズズッ…

あらあら、2人とも夜も遅いんだからほどほどにしておくれよ…。」



千夜はお茶を飲みながら呆れた眼で2人を見ていた。

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