第17話ー 源 レイル
楓は自慢げに胸を張って言う。
「かく言う私も冒険者なんだけどね!
最年少で薙刀系武器を扱う冒険者の上位100ぐらいに入ってるんだから!
凄いでしょ?」
レイルは全く知らない武器に興味津々だった。
「は、はい、凄いですね…」
(薙刀ってどんな武器なんだろう?)
饒舌に喋っていると、背後からスッと音もなく近寄る影があった。
「コレ、楓。いつまでここで喋っておるつもりじゃ?皆修練を始めておるぞ?」
楓の首が壊れた人形の様にギギギッと後ろに向く…
「し、師匠、すいませんー!すぐ始めますっ!
ごめんねっ!レイルっ!またねーっ!」
「…まったく、仕方のない娘じゃのう…
そうじゃ!レイルや!お主の養子の手続きが終わったぞ!これからは源 レイルじゃ!」
「…え?!早くないですか?
もっとこう色々時間がかかりそうな気がするのですけど…」
「ほっほっほ!そこはホレ!コネというやつじゃ!儂はこう見えてちょっと偉いんじゃ」
(ハハハっ、…ちょっとどころじゃない様な気がする)
「ところでレイルや、もしかして武術に興味があるのか?見学して行くかの?」
「良いんですか?弦爺が良いなら是非お願いしたいです!」
「うむうむ。思う存分見ていきなさい。」
道場の中では様々な武器を使い修練をしている冒険者達で熱気に溢れていた。
しかし、どれだけ集中して修練をしていようと、
周りの気配を察知するのを怠っていない。
冒険者達はその気配を感じ取って機敏に整列し、
圧倒的な気配の主を迎える…
「「「押忍っ!おはようございます!老師!」」」
そこに天真正伝・摩利支天流二十三代目当主
源 龍弦が入って来た。
その傍に小さな少年がひょっこり顔を覗かせた。
冒険者達は物珍しげに少年を見る。
「うむ!やっとるな!いきなりなんじゃがな、
今儂の横に居る少年を紹介しようと思っての!
…ほれ、レイル挨拶じゃ。」
レイルはこれだけの強者達に囲まれながらの挨拶などした事が無かったので、
緊張で心臓の鼓動が止まるかと思った。
「は、初めまして。源 レイルと申します。
この度、龍弦爺様の養子となりました。
よろしくお願いします。」
道場は一気に静まり返った…
……………………
…………
…
そして男達の驚きが道場内に響き渡る。
「「「ええぇぇぇっっっーー!?」」」
「老師が…あの戦神と言われた老師が養子を取ったなんて…」
これには楓もびっくりで
「ちょ、ちょっとレイル!貴方龍弦老師の養子だったの!?なんで先に言わないのよっ!!」
「え?いや、そんなに驚く事とは知らなかったので……すみません」
「まぁ良いじゃろ。急だったしのぉーほっほ。」
「もう!龍弦老師まで!
まぁ、いつもの事ですけど。
それから龍弦老師!
今日は私の修練の成果を見てもらう日ですからね!お願いします!」
「そうか、今日は楓の日か。
よし!少し見てやろう。
レイルはそこで見ておれのう。」
(さてさて、レイルは見た感じ才能はありそうじゃが…この稽古でどんな反応をするかの?
……楽しみじゃのう!)
そうして龍弦と楓の実戦形式の試合が始まった。
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