第134話 第三者視点3

 結局、アンリエットの格好もエリザベートに合わせて白いワンピースに決まった。


「これなら文句無いでしょう?」


「あぁ、いいんじゃないかな」


「なんか私とお揃いみたいね」


「お嬢様、良くお似合いですよ」


 三人からお墨付きを貰ったアンリエットは頷きながら、


「さて、それじゃあ行きますかね」


 まずは先にアンリエットの方が馬車で出発した。屋敷を出てしばらく走った所で、


「ハンス、どう? 尾けられてたりしてない?」


「今の所確認できません」


 アンリエットにそう聞かれたハンスは後ろを振り返りながら答えた。


「そう。じゃあ予定通りに、こっちから向かって町の左側の方に進んで行ってちょうだいな」


「畏まりました」


 アンリエットが出てから一時間後にエリザベートが出発する予定になっている。少しだけ緊張して来たアンリエットは、思わず手を握り締めていた。



◇◇◇



 一方その頃、エリザベートの方も出発の準備を整えていた。


「お嬢、そろそろ出発するよ? 準備はいい?」


「なんかあなたに『お嬢』って呼ばれると変な感じね...」


 エリザベートはそう言って苦笑した。


「アハハ、確かに。でもエリザベート嬢もお嬢には変わりない訳だし問題ないよね?」


「ウフフ、そうね。あ、そうそう。アラン。ちょっと聞いていい?」


「なに?」


「あなたとアンリエットって、単なる主従関係っていうだけでは収まらないような関係に見えちゃうんだけど、あなた的にはアンリエットのことをどう思ってるのかしら?」


「あ~...やっぱそう見られちゃってた? さすがに鋭いね~ お察しの通り、俺はアンリエットお嬢にゾッコン惚れ込んでるよ。なにせ見てて危なっかしい人だからね~ 心配で心配で目が離せなくなっている内に自然とそうなっちゃった~」


 アランはあっけらかんと認めた。


「やっぱりそうなのね...その気持ちをアンリエットに伝えたりは...」


「しないし、出来ないよ。立場的にも身分的にもね。この気持ちは墓の中まで持って行くつもり。だから間違ってもアンリエットお嬢には言わないでね?」


「切ないわね...分かった。決して公言しないわ」


 エリザベートは目を伏せながらそう言った。


「よろしくね。さて、そろそろ行こうか?」


「えぇ、そうしましょう」


 二人はアンリエット達とは反対方向、こっちから見て町の右側に向かって馬車を走らせた。


「どう? アラン? 上手く釣れた?」


「お嬢、後ろを振り返らないでね? 釣れたよ」


 アランは前を見詰めながらそう言った。


 エリザベートは気を引き締めた。

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