第129話

 エリザベートはそんな私とアランのやり取りをポカンと眺めていた。


 そしてアランが出て行った後、


「なんだかアンタ達、仲良いのね...主と使用人っていうより、どっちかというと気の置けない仲間みたいな雰囲気を感じたわ...」


「あぁ、そっか。エリザベートには話してなかったわね」


 私はアランを拾った経緯を話して聞かせた。


「そんなことがあったのね...」


「えぇ、だからアランはこういった裏の事情に精通しているの。使い勝手が良くて便利よ?」


「便利って...」


 うん!? エリザベートがなんか微妙な顔してるな。表現の仕方間違えたかな!?


「それよりさっきも言ったけど、あんまり期待しないでね? これはあくまでも普通の悪党が辿るかも知れないっていうルートなんだから。クリフトファー様に当て嵌まるかどうかは未知数よ?」


 寧ろ当て嵌まらない可能性の方が高いような気がするよね。


「分かってるわ...なにか他の手も考えておかないとね...」


「考えでもあんの?」


「う~ん...バカ兄の食い付きそうなエサを撒くのが一番なんだろうけど...そんな都合の良いものなんかそうそうあるとも思えないしなぁ...」


 すると考え込んでいたエリザベートの目が私を捉えた。そしてポンッと手を叩いた。


「ねぇ、アンリエット」


「イヤよ。お断り」


 私は皆まで言わせなかった。エサになるなんて冗談じゃない!


「まだなにも言ってないじゃない...」


「言わなくたってアンタの考えてることなんか丸分かりだっての。アンタと何年付き合って来たと思ってんのよ」


「さすがは親友」


「やかましゃあ! 親友だと思ってんなら尚更じゃ! 危険な目に遭わせようとすんなや!」


「そこをなんとか...」


「しつこい!」


 アランから屋敷の外に出るなって言われてんだ! 梃子でも動くもんかい!



◇◇◇



 その後もエリザベートに粘られたが、私がガンとして首を縦に振らないと見るや、諦めたのか自分の連れて来た使用人と共に、クリフトファー様を探しに町へと向かって行った。


 ちょうどそれと入れ違いになる形でアランが戻って来た。


「お帰り。首尾はどうだった?」


「ん~...客を装おってさりげなく聞き込みしてみたり、金を握らせて聞き出そうとはしてみたんだけどねぇ~ やっぱ口が堅いわ~ 特にこれと言った情報は手に入らなかったよ~」


「そう...ご苦労様」


「エリザベート嬢は?」


「当て所もなく町へ探しに行ってるわ」


 そこで私はさっきのやり取りをアランに聞かせた。


「エサを撒くか...うん、それ良いかも知んない」


「ハァッ!?」

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