第126話
「ねぇ、エリザベート。本当は私があんまり突っ込んで聞いちゃいけない話なんだろうけど、話せる範囲でいいから話してちょうだい。クリフトファー様をまるで犯罪者のように扱ってるみたいだけど、そんなに沢山のお金を持って出て行ったの? こんなこと言うべきじゃないんだろうけど、人一人が持ち出せる金額には限度ってもんがあるでしょう? 金貨にしても札束にしても重いし嵩張るし。その程度の金額なんて、公爵家にとってみたら微々たるもんなんじゃないの? そんなに目くじら立てるようなもんなの?」
「...金だけじゃないのよ...あのバカ兄、債券や株券をゴッソリ持ち出しやがったの...オマケに土地家屋の権利書までね...」
「うわぁ...そ、それはまたなんとも...」
うん、想像以上だったよ...そりゃ必死で追っ手を掛けるはずだわ...
「現金はね、ほとんど銀行に預けてあるからそれ程の損害でもないのよ。ただウチにある大金庫を空っぽにするくらいの額を持ち出されたけどね...」
「ひぇぇ...」
一体幾らだったのか想像もしたくない...
「問題は債券と株券よ。もし全て換金されたら我が公爵家は間違いなく傾くことになるわ...それに土地家屋まで売られた日にゃ、私達どこで暮らせばいいのよ...」
「だ、だよね...」
まさか公爵家が借家に住むって訳にもいかないだろうしね...
「かといって、そんな重要書類を銀行の貸金庫に預けるのは怖かったし...まさか身内に裏切られるなんて思いもしなかったからね...」
「そ、そうだね...」
まさに獅子身中の虫だった訳ね...
「あぁ、でも...アンリエットの言う通りだわ...あれだけの量を一人で運び出すなんて到底無理だから、その時点で協力者が居ることを想定すべきだったわね...」
「あぁ、それがさっき言ってた内通者ってこと?」
「えぇ、恐らく一人じゃないわね...何人か居そう...ハァ...そいつらの洗い出しもしなきゃ...なんかもう...頭痛くなって来た...」
「だ、大丈夫!?」
「あんのバカ兄! 見付けたらタダじゃおかない! もうこれは単なる家出なんかじゃないわ! 我が公爵家に対するテロ行為よ!」
「え、エリザベート。ちょ、ちょっと落ち着いて。ね? ほらほら、腹式呼吸腹式呼吸。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「落ち着いてなんかいられないわよ! あっ...立ち眩みが...」
「え、エリザベート!? しっかりして! ハンス! アラン! エリザベートを客室に運ぶわ! 手を貸してちょうだい!」
「「 畏まりました! 」」
結局その後、医者を呼んで診て貰う騒ぎになったが、診断では単に疲労が溜まっているだけとのことだったのでちょっとだけホッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます