第58話 クリフトファー視点4
そこからは酷い物だった。
勝手な妄想を喚き散らすスカーレットを、冷めた目で見やりながら現実を突き付ける。
ようやく自分の立場を理解したスカーレットが、今度は泣き喚きながら駄々を捏ね始める。
ひょっとしたら錯乱しているのかも知れない。目の焦点が合っていないように見える。
とにかくこれ以上アンリエットにこのような修羅場を見せたくなかったので、僕は強引にスカーレットを連れ出した。
馬車に乗せてスカーレットの実家であるモリシャン侯爵家に連れて行く最中でも、ずっと「ウソよ! ウソよ~!」と叫び続けるスカーレットにホトホト嫌気が差した。
モリシャン侯爵家に着いて事情を説明する。やはりスカーレットが自分で言っていた通り、彼女は実家に何も知らせていなかったようだ。
寝耳に水といった感じのモリシャン侯爵とスカーレットの兄であるモリシャン家の嫡男は、変わり果てた娘、妹の姿に少なからずショックを受けていた。
そしてここでもスカーレットは喚き散らす。
「酷い! 酷いわ! 酷いわ~! お父様、それでも実の親なの!? 実の娘に対してこの仕打ちはあんまりよ~! この人でなし~! お兄様もそうよ! 血を分けた実の妹に対してよくもこんな非道な真似を! このロクデナシ~! あんたら人間じゃないわよ~! ウワアアアンッ!」
「勝手なことをホザくな! この売女が! 貴様なぞ親でもなければ子でもないわ! 馴れ馴れしく父などと呼ぶでない! 不愉快だ!」
「父上の言う通りだ! この淫売が! 貴様はもうこの世に存在しない人間なんだ! 兄などと呼ぶな! 虫酸が走るわ!」
「なんですってぇ~! よくもそんな勝手なことを~! 許さないわアンタら! 殺してやるぅ~! アンタらがこの世から居なくなればいいのよぉ~! 死ねやぁ~!」
「掛かって来いやゴラァ! 殺れるもんなら殺ってみろやぁ~!」
「上等じゃゴラァ! 吐いた唾飲まんとけよぉ~!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!」
殺伐として来たんでさすがに割って入った。なんだか輩みたいに柄悪くなっているし...
結局その後、暴れるスカーレットを拘束し今後の処遇を決めることになった。と言っても選択肢は実質一つしかない訳だが。
スカーレットは修道院に送ることになる。貴族の間では終身刑務所と呼んでいる、戒律の厳しいことで有名な修道院だ。そこに閉じ込めて一生出す気はない。
かなり錯乱している様子なんで独房送りになることだろう。これでスカーレットの件は片付いた。
そのはずだった...
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