第42話 キャロライン視点6

 次の日、当然ながらギルバートに詰られた。


「キャロライン! どういうことだ!? なぜ昨夜は僕に黙って帰ったんだ!? 僕がどれだけ心配したと思ってる!?」


「ご、ごめんなさい...急に体調が悪くなってしまって...あなたに伝えようと思ったんだけど、あのように取り込み中だったから遠慮したのよ...でもせめて誰かに伝言を頼むべきだったわ...本当にごめんなさい...」


 もちろん大嘘である。昨夜はアランとすっかり燃え上がってしまい、ギルバートのことなど眼中になかった。


「そうだったのか...いや僕の方こそ君の異変に気付いてやれなくて申し訳なかった。今はもう大丈夫なのかい?」


 なのに簡単に信じるなんて本当にバカな男だ。


「えぇ、お陰様で一晩休んだらすっかり元気になったわ」


「それは良かった。でも無理はしないようにね?」


「えぇ、ありがとう。それとあの後、大丈夫だった?」


「あ、あぁ、まぁね...問題ないよ...」


 この様子では大丈夫じゃなかったな?


「そう、良かったわ。心配だったのよ」


 と心にもないことを言ってみる。


「ま、まぁ色々とシナリオ通りに行ってない部分はあるけど、そろそろグランドフィナーレだからね。一気に挽回してみせるから心配しないで!」


「えぇ、期待しているわ」


 とだけ言っておく。



◇◇◇



 そして迎えた運命のあの日。


 人が多過ぎたせいで、私はうっかりギルバートと逸れてしまった。どうしようかと思っていた時だった。


「お嬢様、何かお困りでしょうか?」


「まぁ、アラン! あなたって本当に神出鬼没なのね!」


「それが侍従の務めですから」 


「実はパートナーと逸れちゃったのよ」


「そうでございますか。では私めがお探しして参りましょう。お嬢様には別室をご用意致しますので、そちらでお寛ぎ下さい」


「別室!?」


「はい、もちろん『ご休憩』も可能でございますよ?」


「ウフフ、あなたって悪い男ね♪」


 そして私がアランとしっぽり楽しんでいる間にあんなことになるなんて...



◇◇◇



「このこの! バカ娘がぁ! このこの!」


「痛い痛い! お父様! もう止めて~!」


 屋敷に戻ってからも、私は何度も何度も父親に叩かれて顔は腫れ上がっていた。


「貴様とはもう親でも無ければ子でも無い! 気安くお父様などと呼ぶな!」


「そんなぁ...」


「貴様のせいで我が家はもう終わりだ! 最後くらい家の役に立ってもらうぞ! おい! 連れて行け!」


「ちょ、ちょっと離しなさいよ! どこ連れて行くつもりよ!」


 私はウチの使用人達に拘束された。


「そんなに男が好きなら貴様に良い就職先を世話してやる! ずっとそこで腰を振っていろ!」


 その日、私は実の親に娼館に売られたのだった...

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