第19話

 ある日、セバスチャンが手紙を持って来た。


「お嬢様、王家主宰の晩餐会の招待状が届きました」


「やっと来たのね。いつ?」


「今週末だそうです」


「そう。クリフトファー様に連絡して貰える? エスコートしてくれるって約束してるのよ」


「え~と...念のために確認しますが、ギルバート様ではないのですね?」


「もちろんよ。あんなアホに頼む訳ないじゃない」


「プハッ! か、畏まりました」



◇◇◇



 そして晩餐会当日。


「アラン、分かってるわね?」


「ガッテンっスよ! この間と同じで良いんでしょ?」


「えぇ、そうよ。今回もあなたは私の侍従として付いて来て頂戴」


「了解っス!」


 やがてクリフトファー様がやって来た 


「やぁ、お姫様」


「クリフ様、ご機嫌よう」


「いよいよだね」


「そうですわね」


「フフフッ、もしかしてちょっと緊張してる?」


「あら、分かります?」


「まぁね。なんかソワソワしてるように見えるよ」


「ウフフ、きっとギルバートのアホがどんな風に踊ってくれるのか、楽しみで仕方ないんですよ」


「アハハッ! 僕もだよ!」



◇◇◇



 王宮に着いた私達は招待状を見せて中に入った。


「ところでギルバートの家にもちゃんと招待状は届いてるの?」


「それは問題ないはずですわ。腐っても侯爵令息ですもの」


「あぁ、そうだった。あまりのアホさ加減に忘れるところだったけど、アイツの実家は侯爵家なんだっけ」


「えぇ、実家は割とマトモなんですが、貧乏なだけに息子の教育には失敗したみたいですね」


「あぁ、なるほど。教育に金を掛けられなかった結果があぁなった訳だ」


「そのせいだけじゃないと思いますけどね。本人の資質の問題でしょう」 


「違いない。あ、ほらほら、主役の登場だよ?」


 クリフトファー様の視線を追うと、ギルバートがキャロラインを伴ってやって来るのが見えた。


「主役というよりピエロですけどね」


「確かに。ん? なんか僕達の方を睨んでるね」


「大丈夫。まだ騒ぎは起こさないと思いますよ」


 そう思っていた時だった。


「アンリエット! お兄様!」


「アンリエット、クリフトファー様、ご機嫌よう」


 エリザベートとケイトリンがやって来た。


「いよいよね! 楽しみだわ!」


「あらあら、エリザベートったら。端たないわよ」


「えっ!? アンリ!? もしかして!?」


 クリフトファー様が目を丸くする。


「えぇ、この二人にはバレました」


「お兄様ったら! こんな面白いこと黙ってるなんて酷いじゃないの!」


「ウフフッ! 私達に隠し事なんか出来ないんですのよ?」


 私とクリフトファー様は苦笑するしかなかった。

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