第14話

 今日は兄のロバートのアパートに赴いている。


 クリフトファー様は連れて来ていない。というか連れて来れない。いくらクリフトファー様といえど、兄の件は知られる訳にはいかないからだ。


「兄さん、入るわよ~」


 ドサッ! バサバサッ!


「うわっと!? 兄さん! ドア付近に本を置かないでいつも言ってるでしょ! わざとやってない!? この前より多くなってるじゃあないの!?」


「あぁ、悪い悪い。アンリ、いらっしゃい。今日はどうしたんだい!? 順調に行ってるかい!?」


「えぇまぁ、色々と想定外のこともあるけど...概ね順調よ」


 主にクリフトファー様とかクリフトファー様とかクリフトファー様とかね...


「そうか。そりゃ良かった」


「それでね、一つイベントを追加して欲しいのよ」


「どんな?」


「これよ」


 そう言って私はロバートにある招待状を差し出す。


「夜会への招待状...ケイトリン嬢の所か」


「えぇ、参加するのにパートナーが必須な催しが要ると思ったのよ。これまで蒔いた種がどう芽吹くのか確認する意味でもね」


「なるほど、分かったよ。夜会のエピソードを追加しよう。ちなみにパートナーはギルバートでいいのかい?」


「そりゃ当然でしょ。婚約者なんだから。フフフッ、まだ...ね」


 私は意味深に笑った。


「フフフッ、確かにそうだな。まだ...な」


「よろしくね。あぁ、それから」


 私は封筒を取り出す。


「はいこれ。今月分の印税よ」


「ん、そこら辺に置いといてくれ」


「...毎回毎回同じことを言いたくないんだけどさ...いくら実の妹だから信用してると言っても、中身の確認ぐらいはちゃんとしなさいよね...私が着服してたらどうする気よ?」


 私はため息を吐きながらそう言った。


「俺の女神な妹はそんなことしない。それに金なんてあってもどうせ使い道無いし」


「はいはい...」


 私はついに女神にまで昇格してしまったようだ...ロバート兄の妹バカ度は留まる所を知らない...


 頭を振りながら私は兄のアパートを後にした。



◇◇◇



「セバスチャン、これをギルバートに届けてくれる?」


 私はケイトリンからの招待状をギルバートに送るよう、セバスチャンに指示した。


「畏まりました。それとお嬢様、またクリフトファー様がいらっしゃってますが...」


「そろそろ来る頃だと思ってたわ...お通しして」


「畏まりました」


 私は客間に赴いた。


「やぁアンリ、次はどんな悪巧みを企んでるのかな?」


「クリフ様、人聞きが悪いですよ?」


 私は苦笑しながらクリフトファー様に説明するのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る