「お前はいらない」とメンバーから理不尽なパワハラで追放された俺。【古代の武器と喋る力】で最強の古代武器を手に入れる。これからは聖杯を手に入れるために【本当の仲間たち】と一緒に冒険に出ます。

水ManJu

パワハラギルド

「クロード・シャリエ20歳です。ユニークスキルは古代の武器と喋る能力です」俺はシドにそう告げた。シドたちは俺の返答を聞き、顔を見合わせニヤニヤしている。


俺は面接を受けていた。シドたちのクランに入るための。そして俺の真向かいには5人の冒険者達が面接官として座っていた。


「でさぁ。クロードくん。そのユニークスキルの武器とお喋りする能力? それってウチのクランでどう役立つの?」シドが馬鹿にしたように聞いてくる。


「まだ壊れてない古いアーティファクトがあればクランに貢献できると思います」俺は答えた。


「いやだから古い奴ってほとんど壊れてて使えないんでしょ? だからどうやって役に立つの?」シドが聞いてくる。


「ですから……」俺は言いかける。


「もういいわ」シドが俺の言葉を遮る。そしてシドは俺の経歴書をペラペラめくった。


「へぇー君って先の大戦で英雄だったんだね」シドたちは俺の経歴書を回し読みする。


「……ええ……はいそうです」俺は苦々しく答える。


「よし、じゃあ明日から来てくれ」シドは急に態度を変えた。


「えっ?」俺は驚く。


「大戦の英雄は国の誇りだよ。期待してるぞクロードくん。心配するな。このクランのみんなは家族みたいなもんだから」シドはそう言ってニヤリと笑った。



〜三ヶ月後〜


強い雨が俺たちを打っていた。靴の中がぐちゅぐちゅに濡れて気持ちが悪い。


全身が雨と汗でビショビショだ。俺たち6人はうっそうとした森の中、そして土砂降りの中、歩いていた。


「おいゴミ! 聞いてんのか!? オメーだよクズ! クロード!」


リーダーであるシドが怒鳴りつけてきた。


シド……王宮直属クランのリーダー。年齢20後半の男だ。髪の色は白で短髪で気も短い。日常的にパワハラとセクハラを繰り返す。シドがいるだけでなぜかその場の空気がギクシャクする。そんな特別なオーラをまとっている。


「え?」


「オメーがゴブリンの群れを見たって言ったから俺たちこんな中、土砂降りでよーーなぁ」


「はい。それが……」俺は言う。


「それが? じゃねーよ。舐めてんのかお前は!」シドが俺に怒る。


「いえ、舐めてません」俺は言った。すると


「その言い方が舐めてるって言ってるんだよ。クソっ!」シドがそう吐き捨てて前を向いて歩きだした。


「また始まったよシドのイジメ」カシムがヒソヒソ声でサムソンに言う。

「よっぽど前の大戦の英雄様が嫌いなんだろうよ。よくやるぜ。あいつも」サムソンが同じくヒソヒソ声で言う。

「男の嫉妬こえー」と言いながらカシムは笑った。


俺たちはそこから無言で歩いていた。すると


「あぁっ!」


と言ってエリザベスは尻もちをうつ。ぬかるみで足を滑らせたみたいだ。


メンバーはそれに気づかないのか、エリザベスを無視してそのまま通り過ぎる。


「大丈夫?」俺はエリザベスに声をかけた。


「手を貸そうか?」と言って俺は片手をエリザベスに差し伸べる。


「手を貸そうかってあんた! そんなこと言ってる間に早く起こしなさいよ!」

エリザベスが何故か俺に怒鳴った。


エリー……本名エリザベス。炎の魔術師。みんなエリーと呼んでいる。彼女は数多くのクランを崩壊に導いてきたクランクラッシャーだ。人の陰口、噂話が好きでクランの空気を悪くするのが得意だ。


いかに男を騙して自分の味方に引き入れるか、そんなことばかりしている。彼女がいるとクランは最終的に内部から崩壊する。


シドと恋仲っぽい。本人はよく美しい花には毒があると自分を正当化する。でもそんなこと思ってるのは彼女とその取り巻きだけだ。


「あ……よし」そう言って俺はエリザベスの腕を掴み起こす。


「もうやだぁ。お尻濡れちゃったじゃない! もうどうすんの! これ!」

エリザベスはそう言って俺を睨みつけた。


「シドに少し休憩するように言おうか?」俺は提案する。

「そんなことしたら余計帰りが遅くなるじゃない! あんた何言ってんの!」


「……」俺は無言になる。

エリザベスはそう言って歩き出した。

しかし、右足首をひねったようで足を引きずっていた。


「あっ……大丈夫か? 足引きずってるぞ」


「うっさいなぁ……もうさっきから」


「ほら見せてみろ」


俺は土砂降りの中エリザベスの前にひざまずきエリザベスの右足首を両手で包むように持つ。


そして魔法を唱えた。


「癒やしたまえ」ポワっと光がエリザベスの足首を包む。


「これで少しはマシになったと思う。でも本格的な治癒魔術じゃないから。帰ったら教会のヒーラーに見せた方がいいな。それにエリー靴が合ってないんだ。靴も変えた方が……」


俺がそう言いかけるとエリザベスは治った右足で俺の肩を蹴ってきた。


「はぁ? 靴を変えた方が良いってあんた何様よ。あんたに言われる筋合いないじゃん。それに、勝手に右足触らないでよ! 誰が治して欲しいって言った? 変態でしょ? あんた」


そう言うとエリザベスはシドたちに遅れないようにスタスタ歩いていく。

足首はどうやら治ったみたいだった。


対応が間違ったのかもしれないが、結果的には良かったのだろう。

俺はそう自分に言い聞かせてシドのいるところに向かった。


「本当に見たのかよ。見間違えだったらお前なぁ」


しばらく歩いていると、シドはそう言って俺を睨みつけた。


俺はシドの目を見つめる。


確かに俺はゴブリンの群れを見たとは言った。が、追いかけると言ったのはシドのハズだ。


「でも、追いかけるって言ったのはシドさんのハズですよね」俺は反論した。


「あぁ?! なにお前? もっぺん言ってみろ! 聞こえねーんだよ!」


シドは低い声で怒鳴る。他の王宮クランのメンバーは薄ら笑いを浮かべている。


「いや、だから! あなたがゴブリンを追いかけようって言ったんでしょう!」土砂降りの中、俺は声を張り上げた。


「は? 言ってねーよ! そんなこと!」シドは俺に怒鳴りちらす。いや、これは嘘だ。シドの命令で俺たちは動いていたハズなのに。


「もういいよ! シド! 馬鹿はほっといて先に進もうよ!」エリザベスが言う。


クランメンバーからバカにしたような笑い声が聞こえてくる。


「あぁそうだな。こいつと話しても時間の無駄だ」シドはそう言って歩き出す。


「! おいあれトロールじゃねぇか?」

カシムが声を上げた。


カシム……クランメンバーの弓使い。遠距離から魔力を秘めた矢を打つ。ウッドエルフの生き残りらしいが本人は否定している。性格と身のこなしは軽い。つまりシドの腰巾着。


草むらと木々の向こうに巨大にうごめくトロールが見えた。どうやら一匹で行動してるみたいだ。雨の中泥を体に擦り付けて遊んでいる。


「一匹か?」


「あぁ。あの化け物なにしてんだ」


「きったねぇな。泥を体中にぶっかけて遊んでんだ」


「シド。どうする?」


「受注したグレーターデーモンはいそうにねぇなぁ。あいつで我慢しておくか」


シドは少し考えた後言う。


「カシムは高台を確保しろ。弓矢のフォローが出来る位置にな。サムソンと俺はあいつに突撃をかける。ユイとエリーは距離をとって支援しろ。いつものパターンだ」


サムソン……盾役の騎士。全身重装備でフルフェイスの兜をしており、めったに顔を見せない。凄いイケメンか凄いブ男かクランのメンバーの中でも諸説ある。つまりシドの腰巾着。


ユイ……彼女はヒーラー。精神的にもクランの癒し役だ。彼女がいるとみんなホッとする。エリザベスと仲が良いみたいでいつも一緒にいる。だが、エリザベスと一緒にいる時の彼女の笑顔を誰も見たことはない。


「クロードは……」そう言ってシドは俺をチラリと見た。


「行くぞ」


そう言うとトロールに向かって歩き出した。


「えっ? シドちょっと待て……あのトロールは……」俺が言いかける。

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