第三週「簡単な除霊」(結)
どうかしら。これで貴方も明日から除霊の副業ができそう?
今の時代なら、このスマホひとつで除霊もできるんじゃないかしら。
---ああ、でも逆のパターンもあるわね。
ある小さな空き家があってね。なーんのいわれもなかった。
ただ、そこの家主が職を失い、借金の末、夜逃げしてしまったの。
家主不在で建物の解体もできず、そのまま廃屋になってしまった。
でも、別に誰かが不審な死を遂げたとか、家主が殺されたとか、そんな話はまるでなかった。
でもある日、どこかの誰かがそこが「心霊スポット」だと言い出した。「呪われた家」だと喧伝した。
それがホームページかSNS、ブログか動画配信サイト、ネット掲示板への書き込みだったのか、何がきっかけだったのか今となっては分からない。
でも、それがある日、唐突に広まった。爆発的にね。
そしたらどうなったと思う?
---ゴミがね、増えたのよ。
肝試しに来た不埒な若者の捨てた吸い殻やゴミ?
最初はそれももちろんあった。
でもね、それとは別の……おかしなものが、いつの間にかたくさん放棄されるようになった。
妙なシミのついた古びた布団、一部が燃えた御札、不自然な構図の写真、ボロボロの人形とか、ね。
割れ窓理論って知っているかしら?
ひとつの建物の窓が割れているのを放置すると、いつの間にか他の窓も割られている、ってあれね。
何でもない、ただの廃屋だったその空き家は、どこかの誰かの一言で、いつしか本当の心霊スポットになってしまったの。
「心霊スポット」のレッテルを貼られたそこに、みんながみんな「厄」を捨てていった。そこが「厄」のたまり場になってしまったの。
その家は……今は「どうしようもなくなってしまった」。
誰にもどうにもできない。ただもう触れず、知らず、聞かず……放置しておくしかない家になってしまった。
でもね。
それなのに、ゴミは相変わらず増えているの。
近づくだけで危険なところなのに、いつの間にかゴミは増えている。今も増え続けている。
あらあら、これじゃ簡単な除霊じゃなくて、簡単なお
誰でもできる簡単なお
まぁ、場所に限らないんじゃないかしら。このお
さっき話したTさん……自殺したんですって。
例の簡単な除霊を続けていたら、「人を騙してお金を稼いでる」って広まったの。
それがホームページやSNS、ブログや動画配信サイト、ネット掲示板への書き込みまで広まった。
Tさんはいつの間にか実名が知れ渡り、住所を特定され、本業までバレてしまった。
誹謗中傷の中、除霊の仕事はもちろん、普通の仕事もできなくなったTさんはある日、自宅で首を吊ってしまったの。……まぁ自業自得と言えば、その通りなんでしょうけどね。
貴方もいつか誰かから、お
こっちの除霊は簡単じゃないみたいだから。
何せTさんへの誹謗中傷……まだ続いているから。
本人はもうこの世にいないのに、今も増え続けているんだから。
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