第二週「安眠」(結)

どうだったかしら。よく眠れそう?


その昔、「暗い日曜日」という曲があってね。

「聴くと自殺してしまう曲」「検索してはいけない曲」なんて言われてた。


これが発表されたのは1930年代のハンガリー。

なんでもその曲を聴いて世界中で数百人が自ら命を絶ったとか。

しかも作曲者自身も自殺しているのだから、興味深いわね。


そんな危険な曲が今でも聴けるか?

聴けるわよ。普通にね。youtubeにもあるはずよ。


え、そんな危険な曲が野放しになっているのかって?

・・・そもそも本当に「聴いたら死ぬ」と信じている?

「聴いたら死ぬ音楽」がこの世にあると思う?


そんなはずないわよね。


でもね。「これを聴いたら死ぬ」と言われている音楽をわざわざ聴く人間は、二種類。

あなたのように「そんなはずはない」と思う人間と、「最後の一押し」が欲しい人間。自分を殺す最後の一押しがね。


だって、その曲を聴けばこう自分に言えるじゃない。

「自殺したのは私の意志じゃない。この曲のせいだ」って。

人は誰かを殺す時、必ずそれを正当化する理由を考えるの。

自分が殺人に至る理由。殺すに値する理由を。

たとえ、それが自分自身でもね。


さてと、それじゃあこのメモをあげる。

え、これはなんのURLかって?

決まっているじゃない。さっき話した動画を見ることができるサイトよ。


これ、オススメよ。---本当に死んだように眠れるから。


さっきの刑事さんにも教えてあげたの。

教えてあげた、と言うより、教えろと強要されたんだけどね。


ところでなぜ刑事がここに来たのか?


なぜかしらね。私が聞きたいくらいよ。

ここで物語を集めているとね、色んな人が来るの。

さっきの刑事さんは例の行方不明事件に行き詰ってここに来た、と言ってたわ。

今夜の話が事件と何の関係があるのかしらね。


それじゃあ是非、動画の感想を聞かせてちょうだいね。



おやすみなさい。

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