虚実7:3

OKG

序「虚実7:3」

知ってる?

人は100%の嘘を物語る事はできないの。


そんなはずない?

そうね、例えば「私は男です」これは100%のまぎれもない嘘よ。

でもこれは断片的に普遍的な事実を「述べた」だけ。


じゃあ想像してみて。

今日の日曜日、あなたは何をしてた?

起床してから、何を食べたか、何を飲んだか、どこへ行ったか、誰と会ったか、何をしたか、何を考えたか。

眠りにつくまでなるべく細かくね。ああ、メモを取ったりしてはダメよ。


……想像できた?

じゃあ100%の嘘であなたの日曜日を語ってちょうだい。

嘘は嘘でも私が信じそうな嘘でお願いね。

どうかしら。上手く語れる?この場合は騙れる?と聞くべきかしら。


なかなか難しいでしょう。

本当らしい嘘を語ろうとすればするほど、人間は無意識に本当を織り交ぜてしまうのよ。


逆もまた然りでね。

真実を語る時も、人はどこかに嘘を取り入れてしまうのよ。

警察の取調べが何度も何度も何度も何度も同じ事を聴くのもそのため。

何度も語らせる内に真実の精度を高めていくの。


それは勘違いや想像?その通りね。

でもそれは主観的な捉え方で、受取側からすればすべからく嘘よ。事実と異なることを語っているのだから。


え?警察の取調べを受けた事があるのかって?

ふふ、どうかしらね。


この世に溢れる古今東西のフィクション……一見、荒唐無稽に思えるファンタジーや伝説、神話、そして怪談奇譚の数々も、置換や誇張や隠喩によってカモフラージュされた「本当」がこっそり紛れ込んでいたりするのよ。


どうかしら?夢のある話じゃなくて?

良い夢なのか、悪い夢なのかは知らないけれど。


ここにある、おおよそ馬鹿らしい話の数々も何割かは「本当」が混じっているのよ。

あなたさえよければ、その人たちの話を聞いていって頂戴。

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