第13話 強奪者
狙いを定め、引き金を引く。
強い反動と供に放たれる銃弾。火薬を増量した特注のソレは、命中すれば人間の頭蓋など、容易く粉々に吹き飛ばしてしまう威力を秘めている。
しかし、男はかすかな微笑を浮かべたまま、軽々と銃弾を回避した。
その動きは洗練されており、無駄が無い。
カナミは舌打ちをする。
いくら鍛えていようが、人間の動体視力で銃弾を見切る事など不可能。即ち、目の前の男はカナミの銃口の位置から飛んでくる銃弾を予測して回避したのだ。
かなりの手練れ。
久しく見ない強敵に、カナミは歯ぎしりをしながら二発目、三発目を放つ。
こんな事ならアサルトライフルでも持ってくれば良かった。しかし、今回の仕事は狭いダンジョン内という事で、動きを阻害するような大型の銃は持ってきていない。
車まで戻れば予備の銃がある。
チラリと車に視線を向ける。
距離にしておよそ二十メートルほど・・・・・・。問題は易々と銃撃を回避する超人が、車まで戻る隙を与えてくれるかどうかだ。
「さて、次はこちらから参りますよ?」
すべての銃弾を回避しきった男は、和やかにそう言うと、カナミに向かって一気に距離を詰めてきた。
凄まじい踏み込み。
カナミが体勢を整える間も無く、あっと言う間に詰められる間合い。男の両手がカナミに届く必殺の間合い。
「疾っ!!」
短く吐き出される息。
強く踏み込まれた右足は地面を抉り、小さなクレーターを作る。踏み込みから生まれたエネルギーは余すところなく男の体を伝わり、突き出された右の掌へと集約される。
カナミの腹へ叩き込まれる掌。
タダの打撃ではない。内蔵へ浸透するように打ち込まれたその技は、高度な技術に裏付けされた、効率よく人間を破壊することのできる一撃。
肺の空気が一瞬にして吐き出され、カナミは思わず握っていた銃を落としてしまう。トドメの一撃を加えようと男は右手を引き絞り・・・・・・背後から投げられたナイフを視認もせずに回避すると体勢を立て直しながら振り返った。
「奇襲をしかけるときは殺気を消した方がよろしいかと・・・・・・そんな強い殺気を放っていては、私でなくとも回避できますよ?」
「うっせえなスカし野郎・・・まだ頭がフラフラしやがるぜ。思い切り蹴飛ばしてくれやがって」
「あの一撃を受け、立ち上がったタフネスは賞賛します。しかし、私の実力はわかった筈・・・・・・大人しく投降してくれませんかね?」
「答えはNOだ」
「そうですか・・・それは残念」
そういうと男は、背後で腹を押さえてうずくまっていたカナミを蹴飛ばして吹き飛ばし、続けざまにカイトに向かって駆け出してきた。
「こいや、そのスカした面をボコボコにしてやんよ!!」
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