第11話 老人の石像

 戦闘が始まった瞬間。最初に動いたのはカナミだった。




 腰から抜いたのは大型のダブルアクションリボルバー。その無骨な銃は、重量と射撃時の反動はかなりのものだが、その分威力は絶大で、生半可な機械獣なら一撃で仕留められるような代物だ。




 ロストという訳では無いが、そこいらの安ものとは比較するまでも無く良質な品で、カナミの愛用している一丁だった。




 抜いた瞬間、高速で狙いを定めトリガーを引く。




 打ち出されるのは特注のマグナム弾。大幅に火薬を増量したその弾は、凄まじいスピードで射出され、石像の頭を撃ち抜いた。




 ちなみに、技術者が慢性的に不足しているこの時代。弾丸のカスタムなんてした日には相応の金が必要となる。




 先程の一発で、一日分の生活費が賄える事をカイトはまだ知らない。




 しかしその分威力は絶大。石像程度、何の問題も無く粉砕してしまえるだろう。




 モウモウと立ちこめる煙が晴れた時、そこには顔面が綺麗に吹き飛ばされた石像の姿があった。




「先手必勝! 楽勝ね!」




 歓声を上げるカナミ。




 しかし、その声はすぐに悲鳴へと変わる。




 頭部を失ってもなお動き出す石像。指輪のはめられた左手をカナミへと向けると、それに呼応するかのように指輪が輝きだした。




 次の瞬間、指輪を中心として強烈な冷気が放たれる。一瞬にして凍り付く地面。室温がぐっと下がり、空間全体が一気に冷気の地獄と化した。




「・・・・・・嘘だろおい」




 今の冷気が、もし石像がはめている指輪の力なのだとしたら、その力は予想以上と言わざるを得ない。




 ”ロスト”




 そう呼ばれる旧時代の異物の中でも、とりわけ異彩を放つテクノロジーが存在する。




 そのロストは今の技術で再現できないというだけでなく、どのような原理でその効果を発揮しているのかすら全く検討もつかないオーパーツ。




 まるでファンタジー世界の魔法のような力を発揮するロスト。その希少性は計り知れず、一つ売り払っただけで一生遊んで暮らせるほどの金が手に入るという。




「おもしれえじゃねえか・・・・・・がぜんやる気が出てきたぜ」




 目の前のお宝に、カイトはハンターの本能を剥き出しにして舌なめずりをした。




 お宝を目の前にして自分の命を惜しむようでは、それはハンター失格といってもいいだろう。




 二人は互いに視線を合わせると、二手に分かれて石像を挟みうった。












◇ 

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