甘い夢

王生らてぃ

本文

 都会の喧騒から離れて、仕事を終えて家に帰ると、あなたが待っている。



「ただいまぁ。あー疲れた」



 速攻で服を脱いでシャワーを浴び、動きやすい服に着替える。

 それからコーヒーを沸かし、クラッカーの上にチーズをのせて皿に並べる。

 これが疲れをとるのには一番いいのだ。



「ふぅ」



 そして、テーブルを挟んだ目の前にはあなた。

 わたしがクラッカーを食べているところを、何も言わずに黙って見守っていてくれる。私より年下で、わたしより背が低いのに、まるでお母さんみたい。

 コーヒーは苦く、チーズは甘く、あなたは綺麗だ。



「ごちそうさま」



 お皿を片付けたあとは、テーブルに座ってあなたと見つめ合う。

 わたしの息遣い。

 他に何も聴こえない、ただただ静かな時間。今が一番幸せだって思う。

 ほんと、見れば見るほどあなたは綺麗だ。



 …………、



 こうしてあなたを見つめながら、うとうと、テーブルで眠るのが、何よりの幸せ。

 ベッドに行くと、あなたの姿が見られないから。

 夢で見るあなたよりも、今のあなたがずっと素敵。だって、あなたはものを言わない。動かないし、瞬きひとつしない。永遠のわたしの恋人。わたしの愛する人。

 これが夢なら覚めないでほしい。この静謐の甘い夢。

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甘い夢 王生らてぃ @lathi_ikurumi

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