第49話 リッキーリードの謎



「モーズさん!

 俺の呪いが解けるって本当ですか!?」


「私は神聖魔術の伝承者

 マーティン・モーズですよ!

 私に解けない呪いなどありませんよ!

 はっはっは!」


「マジですか!モーズさん!

 いやあ、やっぱり遥々(はるばる)

 出向いた甲斐がありましたよ」


「うーーん、この呪いは恐らく、

 古代のマジックアイテムから

 来る呪いですな。

 例えば魔力を帯びた呪物の

 装飾品であるとか……」


「え……モーズさん。

 もしかして……

 それってこの腕輪の事ですか……?」


 俺はアドリアーノから貰った魔石の腕輪を腕から外した。


「そうです!

 この呪い……な……なんと!!」


 俺が腕輪を腕から外した途端(とたん)にモーズ氏の顔がみるみる真っ青になった。

 

「これは……ちょっと理由あって

 自主的にかけてた所謂(いわゆる)

『上書きの用の呪い』なんですよね

 話せば長くなるんですが……」


「いや……そんな事より君は一体何者なのだ!?

 な……なんと言う事だ……

 こんなにも強力な魔力術式は

 見た事がない!

 果たしてこれは本当に呪いなのか……」


「ど……どういう事ですか?

 モーズさん……」


「申し訳ないリッキーリード殿……

 しかし、少し私に解析の為の時間を

 下さい……モーズ家の威信にかけも

 必ずやあなたの呪いを解いて見せます!」


 こうして、俺達はモーズ氏に呪いの解析をお願いする為に、暫くこのモーズ家に滞在するとなったのだった。



◆◆◆◆


<マーティン・モーズの視点>


 私の名前はマーティン・モーズ。

 この魔術の聖地スティレスドーフに聖人エリック・モーズ神聖魔術の伝承者として生を受けた。

 私は幸運にも幼い頃より魔術の才能に恵まれ、モーズ家に伝わる神聖魔術を修めた。

 同時に世界中の数多くの呪いの解析にも成功し、魔法国家ブラックラの天才魔導師バーガンディの魔術研究に関しても確固たる自信を持っていた。


 しかし今、私は酷く混乱している……128年の生涯において最大の試練と対峙していると言っていい……。


 それはリッキーリードという少年の存在そのものにである!


 最も彼が普通の少年ではない事は見てすぐに分かった。

 しかしながら自分の事を伝説の魔術師リッキーリードと言うではないか……。

 流石にそこまでは信じていなかったが、彼が魔石が付いた腕輪を外した瞬間に度肝を抜かれた!

 一般人には見えないだろうが禍々(まがまがしい)しい魔力によって彼の周りの空間が歪んでいる様に見え、夥(おびただ)しい数の古代文字や魔法陣が彼の全身の皮膚という皮膚から浮かび上がって来るのが見えた……。


 私は神聖魔術の秘術を使い、彼の体内の核に私の意識エネルギーを侵入させ彼の体の内側から解析をしてみる事にした。

  

 驚くべき事に、彼の肉体は、まるで十代前半の少年の様に若いが間違いなく年齢は200歳を軽く超えている。

 そして体内で常に細胞の再生が行われ、老化が進まない仕様になっている。

 恐らく現在の肉体年齢を超えた辺りから、肉体の再生速度が老化のスピードを上回ったのだろう。

 驚くべき事に彼は、これ以上年を取ることは無く半永久的に生き続ける事が可能だろう。

 こんな事は例え魔族であってもあり得ない。

 魔族といえど歳は取るのだ。

 肉体自体が高度な魔法術式によって緻密な構造で設計されている。


 つまりこれで、はっきりした事がある。

 彼は『人間』ではない!

 そして魔族でもない。

 そう……人工的に作られた未知の生命体である!


 そしてリッキーリード君は呪いにかけられていると言っていたが……実際彼の体に刻まれている術式を解析すると一般的な呪いとは明らかに違っている。

 それは彼の魂そのものに寄生しているかの様な……いや、もしくはこの術式は彼自身の肉体と魂を設計した時から刻み込まれているかのようである……。

 最初から設計者によってあらかじめ組み込まれた物であるとすれば……まさか、これはまるで獰猛な猟犬を繋ぐ首輪の様な役目を果たしているのか!?

 一体何故そんなものが入っているのだ……?


 私はとりあえず彼にかけられた術式の構造をメモとして書き写し書斎に移動し解除方法を模索する事にした。

 呪文、術式には製作者の癖が出る。

 この独自な方式は【大魔道士バーガンディ】の術式と酷似している……。


 これはあくまで噂話だが大魔道師バーガンディは晩年、従順な人間兵器としての魔神を人工的に作り出す研究をしていた可能性があったと聞く。

 召喚などではなく、人工的に自らの命令で動く恐ろしい人間兵器の研究だ。

 この噂については数々の魔術道具を制作し人類社会の進歩に多大なる貢献をしたバーガンディが果たしてそんな研究をする訳がないと否定する人間が多かった……。


 もしや自らが作った魔神リッキーリードを操る為の制御装置なのか……?


 だとするならば、このリッキー・リードを生み出したのは大魔道師バーガンディなのか!?

 そしてその彼にかけられた呪いもまた……

 何と言う事だ!

 この仮説が正解だとするのならばとんでもない事だ!

 世界の謎だった征服者リッキー・リードは人工的に生み出されたバーガンディの作った人間兵器のだったのか!



     To Be Continued…




:現在の主要登場人物:


リッキー・リード:

 身長 150センチ

 ドロナック大戦の英雄。

 

クリス・ロージー:

 身長 157センチ

 リッキーの弟子。

 クロスローズシティでは今や有名な酒乱魔道士。


メイ・アンデルセン:

 身長 205センチ

 怪力と硬質化能力、黄金化ゴールデンマザーメイに変身出来る。

 元シスター。


リリアン・ブラッドフィールド・リード:

 身長 177センチ

 リッキーの養子兼ボディーガード。

 変態魔法戦士。

 魔族大陸グランデネロの【血の戦場の狂戦士リリアン】。

 

マーティン・モーズ:

 身長 158センチ~215センチ

 128歳。

 聖人エリック・モーズ神聖魔術の伝承者。

 魔力増幅により肉体が巨大化する。


キース・モーズ:

 身長 155センチ 年齢13歳。

 

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