第25話 ラディッチの傭兵2




 周囲はどよめきと叫び声が入り混じっていた。

 民衆は逃げまどい、周囲は異様な混乱状態となっていた。

 無理もない、民衆の目の前でドロナック国家騎士20人が打ち倒されたのである。


 しかし、ジェイは全く気にも留めないよう様子で優雅に紅茶を飲んでいる。


「あ、ありがとうございます…」


 クリスは体中傷だらけになっていたが、何とか立ち上がり歩こうとしていた。

 

「レオナ、少し怪我してるみたいだから、治療してやってくれ」


「わかったわよ…。

 でも知らないよ、仮にも国家騎士と揉めてた子だよ」


「じゃあ俺は、その国家騎士を撃ち殺した男だ!

 更にクールじゃねえか!」


「はあ…。

 もうあんたと付き合ってると

 命がいくつあっても足りないよ。

 ねえ、お嬢さん。

 傷を見てあげるから

 じっとしてなさい」


「仲間がまだ戦ってるんです…。

 さっき知り合った人も重傷を負ってるから助けないといけないんです!

 その人は僕の大切な人の居場所を知ってるんです!」


「ほう。

 何か訳ありそうだな嬢ちゃん。

 決めた!レオナ。

 俺は手を貸してやる

 早く治療してやってくれ」


「ジェイさん…。

 あなたは一体何者なんですか?」


「いいから話は後にしてね

 今、回復魔法をかけるから」


 レオナの両手が光り出し、クリスを包み込んだ。

 瞬く間にクリスの傷と体力が回復した。


「この回復魔力…。

 この回復速度はまるで…

 師匠が使ったヒーリングみたいだ…」


「よし、じゃあ行くか!

 嬢ちゃん案内しな

 レオナ、カイル行くぞ!」


「レオナさんでよろしいですか? 

 ありがとうございます。助かりました。

 僕はクリスといいます」


「クリス…。

 あなたどこかであった事が

 ないかしら?」


「いえ。

 始めてお会いしましたよ」


「そう…。

 初めましてクリス。 

 私は本当は気乗りしないけど

 あなた、悪い子じゃなさそうね

 今回だけは手を貸すわ」


 その後すぐに、倒れているマイクを発見した。

 マイクは瀕死の状態だった。


「レオナさん

 助かりそうですか?」


「戦場で、この10倍は

 やばい状態の仲間を治療してきた。

 大丈夫、問題ないよ」


 まるで逆再生するかの様に、マイクの傷口が塞がりマイクは一命を取り留めた。

 そして、カイルがマイクを担いでクリスやジェイたちはメイとジェシカが戦っている場所へと向かった。



◇◇


 メイとジェシカは激しい戦闘になっていた。

 メイはジェシカの大剣を高質化で止め、そのまま力でへし折った。


「おおおお!」


≪バキン!!!≫



「驚いた…。

 強き人よ。

 我が名はジェシカ。

 ドロナック王国国家騎士団長

 ジェシカ・ハイランドと申す!

 貴殿のお名前をお伺いしたい!」


「私はメイ。

 アマンダの愛の戦士マザーメイよ!

 アンタも中々やるわね」


 名乗りあった後、二人は向かい合い足を止め、交互に殴り合い壮絶なタフネス比べの様相となった。

 互いの顔からは血が吹き出し顔が変形し、壮絶な泥試合へと発展していった。


「ママ!見て!モンスター大戦争だ!」

「見ちゃいけません!」


 民衆は窓を閉め家の中に避難し始めた。



 そこに遂にクリスやジェイ達が到着した。



「クリス。

 あのデカイオカマが敵か?

 確かに、ひでえ面してやがる!

 あれは根っからの悪党だな!

 相手はまだ小さい女の子だぞ!」


「いえ…。

 あっちが身内です…」


 メイはクリスに気付きバックステップで距離を取り、クリスの横に立った。


「クリスちゃん!

 まだ逃げてなかったの?」


「それが騎士団にやられかけた所を

 この人たちに助けて貰って。

 それにしてもメイさん酷い怪我ですよ

 その…顔が…。エライ事になってます」


「問題ないわ。

 ちょっとメイクが落ちただけよ。

 さてと、ジェシカ。

 そろそろ、決着を付けましょうか。

 アンタ達、手出しは無用よ」


「ほう。

 仲間が来ても尚

 あくまで一騎打ちを御希望とは。

 貴殿の騎士道精神に感服致します!」


「私は只のオカマよ

 騎士道なんてほど遠いわよ」


 二人は構え合い渾身の力を拳に込め互いに降り抜いた。

 すると両者は互いに膝から崩れ落ち、意識を失った。


「メイさん!!」


 クリスはメイに駆け寄りメイの上半身を起こした。


「クリスちゃん…。

 大丈夫。

 生きてるわよ」


「良いケンカだったぜ。

 デッカイ姉ちゃん」


「ありがとう。

 あら、アンタいい男ね」


 レオナはメイに回復魔術をかけ、傷を回復させた。

 そしてレオナは鏡を取り出しメイに手渡した。


「ごめんなさい…。

 もてる限りの治療をしたんだけど

 顔の怪我までは治らなかったわ…

 元通りに出来なくてごめんなさい…」

 

「アンタ、ちょっと美人だからってケンカ売ってる?

 完全に治ってるわよ」


「じゃあな。

 俺達はもう行くよ

 くれぐれも気をつけろよクリス」


「ありがとうございました!

 また会いましょうジェイさん

 レオナさん、カイルさん!」


「ああ。

 またな、でもくれぐれも

 あんまり無茶すんなよクリス」


 ジェイは手を振りクリス達を見送った。


「さてとマイク。

 リッキーちゃんの所へ

 案内してもらいましょうか」



「リッキー…?

 まさかな」


 ジェイは微かに聞こえた会話が気になったが直ぐに首を振りその場をあとにした。


 

 クリスとメイはマイクに案内され、ストラスの基地にたどり着き無事リッキーと再会を果たした。


「リッキーちゃん!

 このお馬鹿さん!!」


「メイさん!!ごめんなさい!!」


 リッキーはメイに取っ捕まり、お尻ペンペンされた。

 クリスはそれを涙を流しながら見つめたが、一切止めなかった。




        To Be Continued….




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