第26話 ドロナック大戦開戦前夜
首都ドロナック近郊港
地下ストラス諜報部隊基地
俺はメイに叩かれた尻の痛みを堪えながら考えていた。
今回の戦いは今までとは少し規模が違い過ぎる。
ストラス人は古代悪魔との契約者がどれ程の力を持つのかと言う事が全く分かっていない。
しかし、この無謀とも思われる戦いへの準備は刻々と進められていた。
現在、俺に報告されている兵力はストラス人とラディ人の残党の連合軍である合計5000人である。
勿論、こんな大群が動けばドロナック軍も大軍を引き連れ応戦するだろう。
しかし、ドロナック王国は東方のカダム、ラディ二国を占領した程の強国だ。
残党の連合軍でとても勝てる相手とは思えない。
彼等は俺を戦力的な切り札として考えているようだが、
残念ながら今の俺は魔力値12…。
はっきり言って無力に等しい…。
「リッキー様!
準備が整いました!
これより会議を始めようと思います!
どうぞこちらへ」
遂に始まってしまった…。
そこにはストラス人の長であるヴィクター・ロウ。
そして初めて会うが
ラディ人の英雄王ウイリアム・ウォーカーの血を引くラディ王
【ビリー・ウォーカー】がいた。
英雄王ウイリアムウォーカーとは、かつてグランデ帝国との戦いにおいて押され気味であったカダム人と連合軍を組み、両国の軍を率いて連戦連勝し国土を守り抜いた英雄である。
その子孫か…。
その後、ドロナック王国に敗れ国土を追われる形になったが、今も尚ウォーカー家の人気はラディ人国民から高い。
「初めましてリッキーリード殿。
ラディ国王ビリー・ウォーカーと申します。
伝説の御方にお会いできて光栄です。
未だに信じられない程です!」
彼は国王であるにもかかわらずとても腰の低い男であった。
「こちらこそ、よろしくお願いします。
俺はあまり役に立てないかもしてないですけど…」
「またまた!
御謙遜を!
まさか、あなた様がお力をお貸しいただけると聞いて
私は感激しております!
これは正に神の巡りあわせに御座います!」
俺は昔からこういった会議が苦手だ…。
だが渋々、会議に付き合わされた。
ドロナック城塞都市は外敵からの攻撃には難攻不落の要塞であり。
5000の兵で攻め落とす事は困難である。
故にラディ国王ビリー・ウォーカーが指揮を取る連合軍で都市を取り囲み国家騎士軍を引き付け、その混乱に乗じてストラス人得意の少数精鋭の潜入部隊で手薄になった城内を叩くという作戦だ。
そしてそのメンバーに何故か俺も入れられていた…。
潜入のメンバーは。
リーダーにストラス王ヴィクター・ロウ。
ディーン、そして彼等の精鋭部隊10人。
後、俺とクリスとメイと言った布陣だ。
クリスとメイはディーンに説得されたのか作戦に概ね同意している様子だった。
勿論ディーン達が強い事はよく知っている。
しかし、今回は相手が悪すぎる…。
ドロナックのアンガス王を始めとする悪魔との契約者である王室メンバーの実力が未知数である。
会議は話が終わり皆、翌日の戦いに備えについた。
「リッキー。
ちょっといいか?」
「何だ?
ディーン」
「実際の所、巻き込んでしまって悪かったと思っている。
しかし、俺達も後に引けない状況なんだ…。
同胞の未来の為に、利用できるものは全て利用したい。
これは皆の腹の内だろう…」
「言っておくが俺は戦力的には役に立てそうもないぞ」
「ああ…。
それでもかまわん。
しかし、伝説の魔道士リッキーリードが
味方に付いているだけでも兵の士気が上がるんだ。
今回はいてくれるだけでも有難いんだよ」
「それと、俺の仲間のクリスやメイに
命の危険があると判断した場合は俺達は引かせてもらう」
「わかった…。
俺が命を懸けてでも
そうならないようにするさ」
ディーンはそう言って自分の部屋に戻って行った。
その時、俺の後ろからメイが現れ俺の肩に手を置いた。
「イケメンね…」
「そうっすね…」
俺はメイがいつも通りで安心した。
◇◇
翌早朝。
首都ドロナック近郊港の地下ストラス諜報部隊基地には
ヴィクター、ビリー王、ディーンをはじめとする50人の部隊が集結していた。
そしてヴィクターが口を開いた。
「これより作戦通りドロナック港を無力化する!
猶予は1時間!
武運を祈る!」
彼等は基地の外に飛び出し、港に配備されていたドロナックの衛兵部隊に一斉に襲撃をかけた!
特にヴィクター、ビリー王、ディーンの三人は鬼神の如く強さだった。
200人はいるドロナックの衛兵部隊を次々と打倒していった。
ドロナック港の衛兵部隊を殲滅に要した時間は30分とかからなかった。
そして、少し待つと。
海の向こうからストラスとラディ連合軍艦隊が姿を現した。
遂に、戦いが始まろうとしていた…。
To Be Continued…
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