第21話 スモークランドの諜報員


 俺はディーンに連れて来られた部屋の椅子に座らされていた。

 部屋には、ディーンの他に彼と同じデザインの黒い鎧服を着た男が2人いる。


「あの、ディーンさん。

 そろそろウチのマザーと弟子が

 心配するんで、早く帰りたいんですけど」


「お前の身元がはっきりしたらな。

 なんせ一人であんな場所にいたんだ。

 どう考えても怪しいだろう。

 俺達の今後の計画の敵になる様な人間なら、

 帰す訳には行かないからな。

 で……お前は一体何処の誰だ?」


「俺は大魔道士リッキーリードだ」


「おい、お前ら。

 こいつを別室に連れていけ

 痛めつけてでも吐かせろ」


「「はいディーン隊長!」」


「ちょっと待て!!

 本当の事言ってんだろうが!

 何でそうなる!」


「馬鹿野郎!

 こっちは真剣に聴いてんだよ!

 もうちょっとマシな嘘なら

 『あ、この子ちょっとバカなんだ』

 で許してやる所だが全く笑えねぇんだよ

 リッキーリードは俺達スモークランド連合王国にとって

 伝説の英雄だ!」


「だから!

 本当に俺がその大魔道士リッキーリードだって

 言ってんだろが!」


「分かったよ……お前ら!

 こいつの魔力値を測定しろ」

 

 ディーンの仲間は魔力値測定の魔力鏡を俺にかざさした。


「ディーン隊長、魔力値12です」


「よし。

 こいつを別室に連れていけ

 頭冷えるまで、ぶち込んどけ!」

 

「ねぇ!ちょっと待って!

 話せば分かる!

 ディーンさん!一回話し会いましょう!」


 俺はディーン達に監禁される事になった。



◇◇◇◇



 翌朝、クリス達の宿泊先では緊急会議が行われていた。

 とはいえ、クリスとメイの2人だけだ。


「大変です、メイさん

 師匠がいなくなりました」


「リッキーちゃんたら……もしかして

 一人で乗り込んだのかしら……」


「昨晩は師匠にしてやられましたね……

 しかも、まだ帰って来ないところを見ると

 師匠の身に何かあったのかもしれません……」


「あら、このあたり繁華街だから

 普通に飲み明かして朝帰りの可能性もあるわよ」


「まさか娼館に!?

 しかし師匠はおそらく童貞ですよ!

 そんな勇気は無いはずです!」


「あんたも随分汚れて来たわね

 リッキーちゃんの前では

 敢えて猫被ってるの?」


「と……とにかく。

 師匠が戻ってない以上は

 一人で乗り込んだ可能性があります

 町で少し聞き込みをしてみましょう!

 あまり、期待できませんが

 もしかしたら目撃情報が

 あるかも知れません」


 

 町で聞き込みをするとリッキーらしき人物の目撃情報が多数あった。



「俺は大魔道士様だ!

 この、下級騎士共め!」

 って酒場で叫んでる銀髪のチビがいた。


「この貧乏人どもめ!俺はセレブだ!」

 って言いながら酔っぱらいの頭を叩いてる銀髪のチビがいた。


「僕、学生なんですけど学割とかききませんか?」

とか言って、娼館を値切ろうとしていた銀髪のチビがいた。

■ 



「まさかの師匠の痕跡だらけですね……

 もはや何しに行ったかすら分かりません」


「こうなると、ただの

 朝帰りの可能性も出てきたわね。

 案外、もう宿に帰ってるかも知れないわ……」


「しかしメイさん。

 普通に遊ぶにしては短時間で色々周り過ぎですよ。

 もしかしたら、師匠は潜入先の、

 情報収集をしていた可能性もあります」


 その時、メイ達の近くで兵士らしき男達が話をしていた。


「昨晩シェリー宮殿に侵入者が入ったらしいぜ。

 警備兵が何人かヤラれたらしいが、

 犯人を見たやつは誰もいないらしい!」


「誰も犯人を見てないのか?

 犯人は相当な手練の可能性があるな。

 まったく、怖え話だな」


「ちょっとアンタ達、その話。

 詳しく聞かせなさい」



◇◇◇◇


 俺は、外から鍵のかかった部屋に閉じ込められていた。

 本当に、ディーンってわからず屋だよね……

 このまま、閉じ込められていたら、クリス達が俺を探しに行って大騒ぎになってるかも知れないよ。


 その時、急に外の様子が慌ただしくなってきた。

 そして、勢い良くドアを開けてディーンが入ってきた。


「襲撃だリッキー!

 一緒について来い!

 おいジェイク!

 外の様子はどうだ!?」


「国家騎士の襲撃です!

 ディーン隊長!

 奴らにアジトがバレた様です!

 それから騎士の中に【怪力のジェシカ】がいます!」


「怪力のジェシカだと!?

 また厄介や奴が来やがったな!」


「怪力のジェシカって誰?」


「ドロナック王国国家騎士団長だ

 200キロ以上の大剣を

 ナイフみたいに片手で

 振り回すバケモンみたいな女だ!」


 俺はアマンダ村のマッスルオネエ様達の姿を想像した……

 何?ここにもそんな人達いるの?

 今、ああいう人達って流行ってんの?


≪バン!!!≫


 石造りの壁がまるでガラス窓の様に吹き飛んだ!


「おい、来やがったな。

 怪力のジェシカ……」



 しかし、壁の奥から現れたのは、想像とは真逆の身長140センチ程の小さな少女だった。

 しかし彼女の手には身長の倍以上はある、大剣が握られていた。




        To Be Continued…


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る