第6話
「あ、はい、サーセン。ふひひひ」
愛想笑いで誤魔化してみたが失言だった。
「ンで?」
“憤怒”課長が仕切り直すように改めてアタシに話を振った。
「そういうオメェはなんかねぇのか、癒し」
アタシだけまだ言ってないから適当に振ったのか、それともこの空気を挽回すべくわざわざ振ってくれたのか。なんだかんだで管理職なんだよねこの人。
本当ならこの話題が自分に向かってきたときには「お布団と枕っスねえ」と返すつもりだった。これはこれで嘘じゃないしアタシが
けれども実は
「ふっふっふ、実はウチには生ハムの原木があるんスよねえ」
全員の
「仕事が辛くても、ミスして凹んでも、クソクレームぶっ込まれても、家に帰れば生ハム原木ちゃんがあると思うと心にゆとりが出来るんスよ」
「そんな話、そういえばネットで見たことがあるような」
「僕もだ。でも身近に買ってるヤツがいるとは思わなかったな」
“嫉妬”ちゃんと“強欲”先輩が口々に呟く。よしよし、もう一押しか。
「それも一本五十万のご当地王室御用達のマジモンっスよ」
室内が静まり返った。ここで手を打ち間違えるとアタシは死ぬ。頑張れアタシ、負けるなアタシ。
「いいなーたべたいなー」
「今日は金曜ですし、良かったらこの後アタシんちで宅呑みでも、どうです?」
全員の目がキラリと輝いた。よし、
正直虎の子の超高級生ハムを
…“暴食”ちゃんにだけ気を付けておけば。
「やったーたべるー」
「マジか、僕も行こうかな」
「たまには皆様と親交を深めるのも宜しいですわね」
「お、お邪魔します先輩」
「今日はダイスケに遅くなるって連絡いれておかないと」
みんなが口々に
「よし、今日の買い出しはオレが持ってやる。上がったらスーパー行くぞオメェら!」
今この瞬間、庶務課の一体感は過去最高に達している。
ありがとう課長、ありがとう生ハム原木。三日分は脳みそ使ったので月曜は有給取りたい。
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