彼女の横顔

@piat

第1話 私は誰にも愛されていないの 読み切り

あのね、私は誰にも愛されてないの。

私のお母さんは私が3才のときに死んだの。

でもね、お父さんがいたからちっとも寂しくなかった。

お父さんは毎日晩御飯を作ってくれた。

お父さんの作る料理は派手じゃなかったけどすごくおいしかった。

あの材料でこんなにもおいしいものができるんだってすごく不思議だった。

小さな頃はお父さんは魔法使いなんだって思っていたぐらい。

小学校から帰ってくるとお父さんが料理を作るのを見ながら、お父さんに学校であったことを全部話し続けた。

小学3年生のときピアノを習いたいって言ったら、ピアノの月謝を払うには残業しなくてはならないから、一緒に晩飯を食べることができなくなるよ。と言われた。

でも、私は、ピアノも習いたいし、一緒にご飯を食べたいって、駄々をこねたの。

そしたら、お父さんは、何とかしようって言って、短編小説の仕事を見つけてきた。

お父さんは私が宿題をする横で、小説を書いた。ある程度できると私に呼んで聞かせて、どんな結末がいいって、いつも私に聞いたの。

お父さんは、私が望む結末を上手に書いてくれた。

ピアノの先生も見つけてきてくれた。美人だから教えるのも上手なはずだって言っていた。

教えるのに美人かどうかは関係ないと思ったけど、その先生は音の出し方を一つ一つ、丁寧に教えてくれた。

そのピアノも中学に入って、陸上に夢中になってやめてしまった。

その時も、お父さんは、真菜が好きなことをしたらいいって、何も言わなかった。


でもね、私が二十歳になった時、お母さんの元に行きます。って遺書を残してお父さんは自殺したの。


だから、私は誰にも愛されてないの。




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