第16話 寝室

寝室


寝室は一緒。ベッドを並べて寝ている。時々手を繋ぐ、「大丈夫みたい」と結花が言う。

「次は添い寝だね。」「もうちょっと待って。」「高校生のアオハルみたいだね。」「そうなの?そうだったの?」

と寝る前の会話が少し前の事。


龍彦さん側のベッドに移った。龍彦さんの腕枕、龍彦さんの胸に顔を置く。

ドキドキしてる。龍彦さんの手があたしの肩に触れる。ビクッとする。す~と息を吐き、目を閉じる。

【大丈夫、大丈夫、、、結花、龍彦さんだから、、、大丈夫、、、】暗示を掛ける様に、心で思う。

暫くの間、添い寝だけの夜。


「ねぇ、キスしてみて。」

「良いのか、、、大丈夫そうか?、、、」

龍彦の唇が、結花の唇に触れる。ビクッとする。ドキドキはするものの、大丈夫そうだ。

結花は、そのドキドキが懐かしく思えた。

中学生の頃、学校帰りに”今日は会えるか?明日は会えるか?”と思って仏照寺に参っていた時のドキドキに似てる。

激しいキスになる前に、結花の方から離れた。

「大丈夫みたい。」

それから毎晩、キスしてからのおやすみなさいが続いた。

龍彦さんはキスした後、トイレに行くと言って寝室を出る事が時々あった。


「……ねえ、、、手でしてあげようか、、、」

「無理すんなよ。」

「やってみる、、、してあげたい、、、」

結花、手を龍彦の下半身へ偲ばせる。パンツの中に差し込む。触ってみる。ドキドキした。触れた、、、大丈夫。大丈夫。

「ひえ~、つめてぇ~。お前の手、つめてぇ~」

「ゴメン。今度から暖めてからにするね。」

龍彦、果てた。結花、大丈夫だった事と、拒絶しなかった事に嬉しくなった。

身体の中へ受け入れる事がダメなのか、身体を触られる事がダメなのか、、、、一つひとつ。


「龍彦とは上手く行ってますか?」

ある日、納骨堂で手を合わせていると、秀一郎さんから言われた。

「え、あ、はい、、、少しづつです。」

重本さんからでも聞いたかな?聞いてないけど、そう思われたかな?と思った。

「毎日のお参り、ご苦労様です。もう充分な供養になったと思いますよ。」

こっちが本題か、、、おじさんの事。

「あれからもうすぐ20年ですな。もう十分では無いでしょうか。

もう、結花さんは結花さんで生きて良いんじゃないですか?、これからは。」優しく笑ってる。少し心が軽くなった気がした。

「今度、お母さんもお越し頂き法要をいたしましょう。来月初めの日曜日に、良いですか?」思いがけない提案。

「連絡しておきます。龍彦さんと暮らし始めた事も報告しておかないと。」

「お願いします。」秀一郎さんが軽く頭を下げ、去っていった。

【もしかして、判ってたのかな?、、、それでも黙っていてくれたのかな?、触れないでいてくれたのかな?】結花、胸の奥が熱くなった。

「龍彦さんっ、来月初めの日曜日に法要してくださるって。」

お店に入り、開店準備をし始めている龍彦に伝えた。

「法要?誰の?、、、あ~、おじさんのか。ハイハイ。お母さんも呼ぶの?」

「うん、呼ぶ。一緒に暮らし始めたのもまだ言ってないから、ついでに言っとく。」

「うん?どっちがついでだ?、、、俺か?法要か?、、、俺かぁ。ハハハ。」


「……ねえ、、、今日は口でしてあげようか、、、」

「いや、良いよ、、、嫌な事、思い出すんじゃないか?だとしたら、、、、」

結花、龍彦となら拒絶は出ないんじゃないか?、早く確かめてみたい。と思い始めていた。

龍彦は、急ぎすぎて良くない結果が出たらどうしようか、、、しばらく離れる事になるんじゃないか、、、と心配性になり始めていた。

「もしかすると、龍彦さん以外の人に拒絶が出るのかもって、、、龍彦さんなら大丈夫かなって、、、」

結花、そう言うと龍彦を覆っていた掛け布団を剥いだ。寝巻代わりのジャージのズボンとパンツをズラした。

龍彦の”もの”が露わになる。

結花の鼓動が激しくなり始めた。少し震えも来始めた。

【なぜ?、、、あんなに見てきたじゃない、、、触ってきたじゃない、、、龍彦さんのでもダメなの?】

何百本、何千本もの男性を処理してきて、慣れていたはずの結花だったが、何故だか身体が反応しようとしていた。

結花の変化に龍彦、気が付いた。

「結花、良いよ。今日は止めとこっ。」そう言うと、掛け布団を自分の下半身に掛け、結花の手を取り自分の横に来るように促した。

「……ゴメンね、、、大丈夫かなって思えたのに、、、」

「急ぐ事無いから、、、俺はずっとでも待つから、、、いや、出来なきゃ出来ないでも良いから、、、手では出来たのにねぇ、何でかねぇ?」

「そっか、見なきゃ良いのか?、、、」結花、突然思い付く。

布団の中へ潜り込み、ジャージのズボンとパンツを脱がされたままの龍彦の”もの”へ手を添える。顔を近づける。

ドキドキしない、ドキドキしてる。拒絶の時のドキドキではなく、初めての行為をする時の様な、乙女なドキドキ。

龍彦の”もの”へキスをした。【大丈夫だ!】更にキスを重ね、咥えてみる。【あっ!大丈夫だ!】唇や舌で愛撫してゆく【平気じゃんっ!やったっ!】

【嬉しい、、、龍彦さん、ここまで出来たよ!、、、あたし、出来たよ】龍彦、結花の口の中で果てた。

結花、枕もとのティッシュで口の中の物を拭う。龍彦の胸に顔を埋めながら、

「出来たよ、、、龍彦さんを受け入れる事、一つは出来たよ、、、あたし、、、嬉しい。」

「……バカっ、、、ダメだったらどうする心算つもりだったんだよ~。……怖くて、俺、怖くてイケないかと思ったら、、、、イッっちゃったよぉ~。」

「龍彦さん、、、」「結花、、、」


暫くの間は、手や口でのコミュニケーションを続けていた。キスは毎晩、少しずつ激しいキス。龍彦への愛撫は2,3日置き。

ハグやキスの時、龍彦の手が結花の頬や頭、肩や背中に触れるのは平気だった。胸はどうだろう?太ももやお尻は?あそこは?

龍彦は怖がっている。結花より怖がっている。拒絶が出てしまい、結花が離れて行く事が怖い。

龍彦自身は、結花の酷い拒絶の場面には出くわしていない。軽い身体の震えや動揺を見た位だ。

結花、キスの途中で龍彦の手を自分の胸にいざなってみた。龍彦の大きな手が胸を覆う。龍彦、指に力を入れ動かしてみる。

”ビクっ”  結花の身体が反応する。結花、拒絶が出るか、出ないのかが分からない。鼓動が激しくなる。

龍彦の手に結花の鼓動が激しくなったのが伝わってきた。龍彦、胸から手を離す。

「怖いよ、俺、、、もう少し待ってみよう?」

「うん、、、そうする、、、」

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