ヒロインの末路

 今日もまた、王太子殿下にベタベタくっついている雌。

 見覚えがあるけどあれは?


「ノレラ男爵令嬢でございます。ルシンダ様」


 お付きのマリアが教えてくれる。

 そうなの。

 まあどうでもいいけど。


「礼儀知らずなのね」

「何でもノレラ男爵が戯れにお情けをかけた平民の娘だそうで。跡継ぎを無くされた男爵が仕方なく引き取ったと」


 マリアが聞いてもいないのに教えてくれる。

 ならば仕方がないか。

 ここは王立学園。

 卒業するまでは皆学生の身分。

 王太子殿下も公爵家のわたくしも、そしてあの雌も。

 多少・・の無礼は許される。


「いかが致します?」

 マリアが聞いてくる。

「ほっておきなさい。殿下も学生の間くらい、戯れが欲しいのでしょう」

「はい」


 どうでもいい。

 ちなみにわたくしは浮気などしない。

 身分がどうとか以前に面倒くさい。

 それにしてもあの雌、早くどこかに行ってくれないかしら。

 これから殿下とお昼をご一緒する予定なのに。


 するとマリアがつい、と出た。


「そこの方。いい加減にしなさい」


 ちなみにマリアはわたくしの侍女ですが子爵家の出だからあの雌より身分が高い。

 すると雌が振り向いて言った。


「五月蠅いわね! フラグ立ててる所なんだから邪魔しないでよ!」


 なるほど、確かに礼儀知らず。

 庶民丸出しね。

 つい笑ってしまったら雌が噛みついてきた。


「何笑ってるのよ! 悪役令嬢のくせにヒロインを馬鹿に……」


 ドシュッ! と。

 喉を切り裂かれて崩れ落ちる雌。

 マリアが短剣の血糊を振って落とす。


「お目汚ししました」

「いいのよ」


 いつものことだ。


「おやおや。過激だね」

 王太子殿下が笑いを含んだ顔を向けてくる。

「よろしかったので?」

 遊び道具を手にかけてしまったからご機嫌を損ねられたかもしれない。

 マリアの命は助けたい。


「んー。何か面白そうだったから止めてたけど。まあいいよ」


 目立たぬように控えている殿下のお付きが会釈する。

 ご機嫌斜めのようだ。

 あの方は伯爵家の出だったような。

 マリアと違って帯剣しているから、動いたら雌の首が飛んでいたでしょうね。


「それでは」

「うん。どうぞ」


 殿下が差し出した手に縋る。

 後ろではマリアと殿下のお付きが下働きに指示して雌の死体を片付けていた。

 今日のお昼は何でしょうか。

 なぜかお肉が食べたくなってしまいました。

 どうしてでしょうね?

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悪役令嬢ものを読んでいて思いついて20分で書きました。

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