戦争と英雄
バブみ道日丿宮組
お題:戦争と洞窟 制限時間:15分
戦争と英雄
「お前に必要なのは死地だ。生地ではない」
片腕を切り落とした戦乙女はそう告げる。
「それを決めることも君じゃないよね」
僕の刀は彼女の心臓を貫いてた。刀は魔剣。痛覚を倍加させる能力を持つ。そんなものが心の臓に刺されれば平常心は保てない。
戦いは僕の勝利で、彼女の敗北だ。
「あぁ……残念だよ。ここまで幾度なく戦い……それが生きがいとなってたのがこうも簡単に崩れ落ちるというのはな」
ゆっくりと落ちる彼女をなぜだか僕は片手で受け止めてた。
平常心を保ってるからなのか、ずっと戦ってきた相手だからなのか、僕自身の制御ができてない。
「なぜ手を伸ばす。宿敵だぞ? それに周りをよく見てみろ、私の配下が次にお前を狙うことになるぞ
。今は遠くにいるが、リンクが途切れれば奴らも察する」
「死ぬ人間に正義も悪もない! 戦争の犠牲になる兵士なんていらないんだ。生きる権利は全てのものにある」
彼女は笑った。笑いながら、血を吐く。
「じゃぁお前は戦争を終らせる英雄となれ。この刀がお前の新しい力となるだろう」
彼女は、持ってた刀をこちらへと向けた。
「さっさと私をおろせ。刀が受け取れないだろう」
あぁと僕は無条件に従ってしまった。
「受け取ったな。ほれみろ、私の腕がお前の失った部分に吸い込まれてく。妖刀だからな、扱いには注意しろよ」
「……なぜそこまでしてくれる。そんなことをするなら戦争を終わらす仲間にだってなれたはずだ」
「さぁな……わたしは……、い、きてるのはたたかうだけの、きかいだったから」
僕の腕が完全に再生し終えると、彼女は死に絶えた。
せめてもの感謝として僕は、受け継がれてきたマントを彼女の上にかぶせた。
平和のため、戦争を終わらすため、僕は妖刀の主として生きることをこの時決意した。
妖刀と魔剣の力は戦争を終わらす速度を早めた。同時に僕の寿命もまた縮んだ。
「……あと一国」
洞窟で今までやってきたことと、これから行われる最後の戦争のイメージを開始する。
妖刀の一振りで風の刃をつくり、そこから魔剣の力で傷を負ったものに痛覚を与える。たったそれだけで普通の兵士は倒れる。
問題は同じ魔剣使い、妖刀使いだ。
削れるものはもう少ない。
英雄になれとあいつはいってたが、今の僕はただの殺戮者。
そう呼ばれてる。
それでも彼女は僕を英雄と呼んでくれるだろうか。
この戦争が終わったら、僕もきっと彼女と同じ場所に行く。
その時に聞いてみるとしよう。
戦争と英雄 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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