第1話 想うゆえに

スィオネ:前回の冒険を経て、ちょっとロールプレイというか、『冒険の宣誓』をしてみます。街に図書館はありますかね?


GM:歩いて2日ほどの距離にハーヴェス王国がありますし、そこには及ばないと思いますね。調べる内容によって、該当資料があるかどうか決めましょう。何をお探しですか?



スィオネ:ガスト大量発生の謎について手がかりがないか、調べてみようと思ってます。



GM:それでしたらあるでしょうね。……そうですね、ロールプレイのきっかけになりそうな情報を渡せそうなので、これを知ることができるか判定してみましょうか。…と思ったんですけど、スィオネさんは基準値が5あるんですよね。じゃあ、判定なしでいいでしょう。

『ガストは蛮族によって、召喚使役されることが多い魔物であり、ドレイクの間には、ガストを封じて歩くことができる<魔石>と呼ばれる宝石の製法が伝えられており、彼らはこれを部下によく持たせている』ということが分かります。



スィオネ:ふむふむ…。

「ガストの大量発生には、やはり蛮族が関わっているのかしら? ……このこと、サクさんに伝えるべき……?」

ハリエットからの依頼説明の際に、サクさんの雰囲気が変わったことを思い出します。



ボラフ:ドレイクは、ドラゴンの雛のときにちょっと説明されていた蛮族だっけ。竜に姿を変えることができるっていう。



GM:ドレイクの基本的な情報については、スィオネさんなら知っていていいでしょう。元から知っていたでも、ガストについての先ほどの記述に出てきたので調べていたでもいいです。

『ドレイクは優れた知性を持っており、他の蛮族種族を統率することもある』。



サク:となると、直接手を下していないまでも、関与している可能性はありそうスね。サクには知る由もないというか、関係なく全ての蛮族を憎んでますね。



スィオネ:蛮族に見せかけた狂人の仕業という線が消えたわけではないですけど、とりあえず、まだサクさんには伝えないでおきましょうか。

「(アゼルが蛮族に狙われている……? まさかとは思うけれど、油断しないでおきましょう)」

こんなところでどうでしょうか。



GM:はい、ありがとうございました。



ボラフ:ボラフも一緒に図書館に行っていたことにしていいですか?



GM:スィオネさんがよろしいようでしたら。



スィオネ:大丈夫ですよ。一人にしてと言っても着いてきているのでしょうしw



ボラフ:そのとおり。無駄にスカウト技能を使うかもしれないw 調べ物をしている間は黙ってその様子を見守っているけれど、図書館を出ようとしたところで声を掛けます。

「スィオネ様、その様子ですと、よい成果が得られたようですね」



スィオネ:「ええ。ハリエットさんが先日のガストの大量発生の件で、蛮族が関わっているかもしれないと言っていたからちょっと気になって。過去に他大陸も含めて、そういう事があったかどうか調べていたの」



ボラフ:「左様でしたか。その様子だと『あった』ということでしょうか」



スィオネ:「そう、ね。……ねえ、ボラフくん、このこと、サクさんには話さないでおかない? そもそも今スィオネたちにできることがないというのもあるけれど、何だかサクさん、蛮族のこととなると様子がおかしくなるというか……」



ボラフ:「スィオネ様もお気づきでしたか。ちょうどそのことをお伝えしようと思っていたところです」

ここでボラフはちょっとだけこう考えるよ。

「(やはり普通の人族であれば、理解できるものなのですね)」

圧倒的に人生経験が浅いことに少しだけ劣等感を”覚えて”いる。つまり、ある意味、少しだけ成長できているんだね。



スィオネ:じゃあ、その様子に気づきましょう、親として!w

「ふふ、ボラフくん、いい”表情”してるね」



ボラフ:「は、はい?」



スィオネ:「するようになった、っていうか。サクさんのおかげかな。やっぱりスィオネ以外の人と関わることって、ボラフくんにとって大切なことだったんだよ」



ボラフ:「……私の始まりはスィオネ様です。これから先、きっかけがどれだけ増えようと、それは変わりません」

ここから先は心の声で「(だから、スィオネ様を、始まりを、失うわけにはいかないのです)」

…と、こんな感じの重い感情を胸に秘めたところで、ボラフの『冒険の宣誓』としよう。

きっとこの激重い気持ちも、ちょっと前だったら口に出していたね。でも、これを抑える分別もついてきたw



GM:おお、成長していますね~。



サク:サクは、映画とか漫画アニメだと無言で武具の手入れや鍛錬をもくもくとしているカットが映る、そんな感じにしておいてください。



スィオネ:二人が噂しているからカメラがそっちを映すけど、感情が読み取れないし、ちょっと不穏な気配がするあれですね。



GM:なるほどw ただ、これを『冒険の宣誓』ととらえるのはちょっと無理がありそうなので、依頼を受ける前後あたりで何かお願いしますねw



サク:はい、オッケーですw



GM:というわけで、次の冒険に行きましょう。ステップが3になったので、受けられる依頼が前の残りの他、3つ増えました。



スィオネ:前回と同じくハリエットさんの依頼を受けてコネクションを強固にしていくのもありでしょうか。



サク:サクとしては、蛮族の討伐をしたいところだけど、捜査と討伐の依頼をこなしたところだし、プレイヤーとしてはそれ以外の依頼を受けてみたいとこスね。探索か、護衛か。



ボラフ:なら、ちょうど、ハリエットさんの護衛任務があるし、それにしてみる?



スィオネ:じゃあ、それで! 新しい依頼に比べれば少ない報酬だけど、マイナスにならなければいいかってくらいですものね。今回はすんなり行きましたね。



GM:「あなたたちが引き受けてくれるのであれば、依頼者のハリエットさんも安心すると思います」

『要人の護衛①』を引き受けることを伝えると、マルコも安心したように微笑みました。仲介する以上、マルコくんもそういうところに気を遣ってるんですね。特にやりたいことがなければ、ハリエットを登場させますが、いいでしょうか?



スィオネ:ちょっとサクさんの顔色を伺います。今日のサクさんは落ち着いていますか?



サク:そうスね、要人の護衛については、「ああ、この間のお嬢さんか。しっかり守ってやろうな」と快活な様子で、いつもの細目で言っています。



ボラフ:内心で、「(スィオネ様の他に護衛対象が増える? いえ、私の護衛対象はあくまでもスィオネ様です。ハリエット様に関してはサクに任せましょう)」と思っています。



スィオネ:こらーw でも、ハリエットさんの護衛ならルークさんもついてきそうな気がするけれど、どうなんでしょう? 来たら聞いてみますか。



GM:では、ハリエットが《希望の架け橋亭》にやってきます。

「あら、この間の!」

ハリエットはあなたたちのことをちゃんと覚えていたようです。

「ガストの件、とても大変だったと支部長から聞いたわ。放っておいたら、街の人たちが襲われるような事態に陥っていたかもしれない。改めて直接お礼を言わせてちょうだい」

大人びた顔をして、しっかりと言います。



スィオネ:「確かに強敵でしたね。でも、こちらも報酬はしっかりいただいてますから」

えーと、ところでルークさんは来ていますか?



GM:今日は来ていないですね。



スィオネ:あらあら。指摘してみましょうか。

「あの、そういえば今日、ルークさんは?」



GM:ルークの名前を出すと、ハリエットはそれまでの表情から一変、年相応……よりも幼いような顔であからさまに拗ねます。

「目を盗んできたの。まったく、ちょっと外を散策するだけなのに過保護なんだもの」



ボラフ:『危ないからやめなさい』って言っている一人がルークさんなのかな。

「ハリエット様に何かあったらと気が気でないのでしょう。ルーンフォークの本能です」



スィオネ:「……うん、その気持ち、よく分かるわ、ハリエットさん」しみじみ言いますw



GM:「分かってくれるのね! ……でも、私だって町の外が危ないことは分かっているわ。だから、腕の立つ冒険者の皆さんに、しっかりと護衛してもらいたいの」



サク:「ハリエットさんは、町の外で何をしたいんじゃ? 皆に止められているし、危険なことも分かって冒険者に依頼を出している。ただの小旅行というわけじゃないんじゃろ? そこまでしてやりたいことっていうのは何じゃ?」



GM:「そ、それは……ごめんなさい、あなたたちを信用していないわけじゃないんだけど、言えないわ」



サク:「別に責めてとるわけじゃない。ただ、例えば町の外にしかない薬草を取りに行くとかそういう目的があれば、ワシらにも手伝えるかもしれんというだけじゃ。言いたくないなら別に構わんよ」

このやり取りを今回のサクの『冒険の宣誓』ということでいいでしょうか?



GM:はい、いいですよ。これで、今回も”剣の恩寵”が使えますので、忘れないようにしてくださいね。

「そうね。いつかきっと話すわ」

ハリエットは苦笑しながら言いました。

さて、それでは、特にやりたいことがないなら出発しましょうか。

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