美術館
バブみ道日丿宮組
お題:つらい絵画 制限時間:15分
美術館
美術館が潰されると聞いて、入館したこともあって中に入ってみると潰れる理由がなんとなくわかった。
「……」
人がいないというのは潰れる理由にはならないけど、人気がまるで感じないというのか訪れた気配すらない。
ほこりも、ライトアップも全て整ってるのに、絵画たちに目を向ける人はいない。
これでは描いた絵師は浮かばれない。
なにかしようと思ったとしても、もう……運命は決まってる。
それに僕が知ったからやってきたわけで、僕も他の人とやってることは同じ。美術館に興味はない。たった1つのわかりきった答えだ。
「……お嬢ちゃん、面白いのはあったかい?」
声に振り返ると、館長がいた。
「はぁ、どれも見たことない名前の方が描いたものだなと」
「ふむふむ。確かのこの美術館に有名な絵描きの作品はないよ」
どうしてだろうと頭を傾けると、
「この美術館は元々人の罪を裁く場所として存在してたんだ」
その言葉を聞いて、すこし見えたものがあった。
確かに人が焼かれたり、ばらまかれた木になったものなど、地獄絵図が多いなとは思った。
「罪は誰かが覚えてなければ罪にならない。人が死んだら忘れてしまうだろう?」
「覚えてたら死なないってやつですか?」
館長はにっこりと笑う。
「そう……だからつらく醜い絵画たちもこうやって飾られる価値があるんだ。自分たちの歴史で間違ったことがあった。そのことを忘れてはいけないし、繰り返してはいけないとね」
でも、と館長は言葉をつまらせた。
「彼らたちも美術館がなくなってしまうと、その存在は消えてしまう」
「……そうですね」
かける言葉が思いつかなかった。
僕に買い取るお金はないし、飾るという考えはないというか、存在理由を聞いた今となっては僕の部屋にあるのもなにか違う気がする。
「美術館がなくなったら、この作品たちはどうなるんですか?」
当然の疑問だった。
「神社にしばらく管理されて、そして然るべき手段で処分される」
「……なるほど」
この世の闇を払うということなのだろう。
「館長さんはどうするんですか?」
「私もいなくなるさ。そういう時間がきたということなんじゃろうな」
職場がなくなって、他の美術館の館長にはならないのか。
それほどまでにこの作品たちを愛してたのだろうか。
「ほら、もう閉館の時間だよ。出口に急ぎなさい」
「はい、ありがとうございました」
館長さんにおじぎをすると、キレイな笑顔を返してくれた。
あとになって聞いたけれど、館長なんて存在はおらず、元々美術館は廃墟化が始まってたらしい。
僕は最後の来館者として導かれたんだと、忘れないようにネットに記事を書き込んだ。それは瞬くもなく、都市伝説の一つとして広まることになった。
これで彼らの作品も、館長さんもまたどこかで現れるかもしれない。
美術館 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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