うまれた契約者

バブみ道日丿宮組

お題:明日の宿命 制限時間:15分

うまれた契約者

 別れの歌を口ずさむ。

 それで僕と、彼の契約は完了した。

「さぁ契約者は祭殿に、形代は湖へ」

 黒いロープを羽織った祭壇を守るものたちは、僕たちの手をそれぞれ引っ張っていった。

 明日会う時に、明日会うために、今はこうして従うしかない。

 どちらかが死に、どちらかが生を得ても、恨み言はいえない。


 祭殿につくと、3つある扉のうち左が開いた。

「契約者はまずお清めからはじめてください」

 僕は指示されたとおり、中に入る。

 そこには大きなお風呂……のような場所だった。

「……っ!」

 足を入れるとぞわりと何かがはってきたがする。進めるごとに、何かが僕の中に入ってくる。

「さぁ、全身をお入れください」

 拒否することはできない。

 なぜなら、そうすることが僕と彼の運命だから。

 全身浴になると、もはや虫が身体を這ってるような感覚が支配してきた。髪の毛を誰かが触り、秘部を何者かが撫でる。肌を舐められる。

 そんな苦痛に耐えてると、

「ぼはぁ!?」

 上空からお湯がかかってきて嫌な感覚はなくなった。

「終わりです。次は血をふさわしいものにかえます」

 

 今度は右の扉だった。

 そこは椅子があり、天井からチューブのようなものが大量に垂れ下がってた。

「お座りください」

 大人しく座ると、手足は拘束された。

「あの動けないんですが?」

「はい、動かれると困るからです」

 そしてその言葉の意味を知った。

「っ……!?」

 チューブが僕の身体に接続されて、何かが循環を始めた。

 さっきが外面を塗装したと仮定するなら、これは内装を別のなにかにかえるという意味なのか!?

 目がちかちかした。

 凄まじい流れを感じる。

 血が、血でないものに変わってく。

 これで完全に人ではなくなる。

「あ、あぁ、あぁ、ああ」

 だんだんと循環の流れは一定になり、異物の感覚はなくなった。

 最初から僕に接続されてたように。

 そう思ってると、

「終わりました。次は晩餐の覚悟をしてもらいます」


 真ん中の扉の中は、大きなシアタールームだった。

 誰もいない、席が1つだけあるシアター。

 座れと言われ座ると、映像が当然のように流れた。

 それは僕と彼の今までの人生だった。

 産まれた時、恋に落ちた時、組織に捕まった時、逃げようとした時、いろんなものをが流れた。


「明日あなたは供物となった形代を食し、新たな契約者になってもらいます」

「……はい」

 言葉をかけられた時、僕の精神はもう言われるがままだった。


 そして……彼の味は覚えてない。

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うまれた契約者 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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