経済崩壊後のバランサー

バブみ道日丿宮組

お題:蓋然性のある目 制限時間:15分

経済崩壊後のバランサー

 未来を視るというのは誰にでもできる。

 青信号が赤信号に変わる、そんなことでも未来がわかるといえる。

 ただ一般的に言われる未来予知と言われると、そんなものただの言葉遊びだと罵倒されるだろう。

 当然、僕はそんな曖昧なもので物事は言わない。

 僕ができるのは、確実に起こることを目で捉え、頭の中で知識を知恵に変え結果を導き出すだけ。たったそれだけで蓋然性のある目を持つことができる。

 今はネット社会。

 パソコンを何台も並列作業して打鍵し、ハッキングにハッキング。

 情報を先に入手、裏情報を相手に流す。

 これだけで運命を変えられる。

「ん、また誰かが引っかかったか」

「……ん、じゃねーよ。いくら生命が狙われるからって地下迷宮で人殺しをしてる探偵がいてたまるか」

 文句をいってくるのは、依頼を持ってくる幼馴染。彼はパスがあるからこの部屋まで入ってこれる。もっとも外社会で彼を狙うことは僕に戦争を仕掛けることだから、シークレットサービスが彼の背後にはどの国もつけてる。

 彼の死がまさに戦争のトリガーになるのさ。

「狙われる理由はないけどね。僕は知りたい情報を得て、必要な人物に情報を送る。ただそれだけのことだよ」

 得たお金で動物たちだけが暮らす島を作り出すこともできたし、社会貢献活動はしてるつもりだ。殺人をしてる結果は覆せないが、必要なことでもある。

 僕はまだ死ねない。

 世界のバランサーが地球という大きな惑星でコントロールできるように調整しなきゃいけない。

「もう少し世界を外に出て調べるとか、そんな探偵の仕事なんて本当にいるのか?」

「世界はここからでも見える。最新のバーチャルリアリティを体験してみるかい? 機能としては睡眠食事排尿まで体験できる仕様のを完成したばかりだ」

 もっとも現実と判断がつかなくなるから、よっぽどの精神力がないとダメ出し、呼び戻せるメカニックがいないと危ない。この場合は僕がメカニックであるから問題はない。

「そういうことじゃないんだけどな……まぁお前が世界がおかしいってのはわかるよ。俺も世界をぐるりと何回もまわって、バランスなんてクソ食らえの調整だ。クソゲーと神ゲーが存在してるみたいで嫌になった」

 深い溜め息が聞こえた。

「これでもすこしは変わったんだよ」

 スクリーンにあるデータを映し出す。

「この国の内部スパイはほとんど潰した。そして国籍の怪しい政治家も元の国へと強制送還した。もちろん、ICチップを脳に入れ込んだ状態でね」

 ICチップ……これがもう少し早く作っていられれば、この国は経済崩壊をしなかった。

「あんな国は二度とみたくねぇ。だから、俺も手伝う。それは変わらねぇよ」

「僕らには僕らのできることを」

「「するだけだな」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

経済崩壊後のバランサー バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る