読書感想文「ミュゲ書房」を読んで

おれごん未来

ミュゲとはスズラン。スズランの花言葉の物語

 これはエッセイの形をとった、私からの書籍『ミュゲ書房』の作者である伊藤調さんへの私信です。ファンレターと思ってください。

 本来なら便箋でご本人にのみ届けるべきところではありましょうが、これを読んでミュゲ書房に興味を持ち、ミュゲ書房を手に取る方が新たに生まれればと思いここに置きます。




 まずこの書籍の紹介を。

 この作品はカクヨムで投稿された作品です。今でもウェブ版が読めるものの、そちらは大幅な改稿の恩恵に預かっていません。ですので書籍版の方を強くおすすめします。現代劇で、きちんと地に足のついた真面目で胸が温かくなる作品です。


 以下あらすじです。

 ある業務上の失敗を気にかけて東京の出版社を退職した宮本章(27)。彼は同時期に亡くした祖父が遺した小さな町の書店を継ぎます。それがミュゲ書房。

 その北海道のA市にあるミュゲ書房を舞台に、本に関わる人々が交錯するのが前半。

 そこだけでも大泉洋さん主演で映画化されそうなくらいなのですが、白眉は後半部分にもしっかりと。


 過去の東京での失敗が北海道まで追いかけて来ます。

 MARUYAMAが運営するソウサクというどこかで聞いたウェブサイトが登場し、そこで行われたコンテストで悶着が過去にあったのです。その意趣返しを北海道で。サイトのトップランカーと編集者のふたりの挑戦が描かれています。

 残念ながら私のような底辺書き手は登場しません。ただ、これ私かなぁ〜と受け取れる一文が書籍版では追加されていました。( *´艸`) デュフフ

 この騒動を描いて本作は閉じました。いくらでも続編が書けそうな本作、続刊を望みます。


 ファンタジー作品が過去最も隆盛を極めている今に、この物語をカクヨムから拾い上げて世に出した出版社KADOKAWAさんの心意気が光りました。本当に意義のある良い仕事をされていると思います。




 それでここからが感想文になるのですが、がっつり内容に触れていましたので投稿前に全削除しました。危ない危ない。

 作品に触れてもらいたいのにここで名場面を紹介しては本末転倒。ゆえに外殻しか述べませんので悪しからず。まあ主目的はファンレターですから。


 装丁に関しては他の方に譲ります。私は造詣がありませんで。相対比較する対象を持ち合わせていないのです。それでもきれいだな、手触りがいいなとは感じました。

 まず本を開いて後書きがないのを確認。それは作者様ご本人のツイートか何かより情報を事前に入手済み。最後の1ページまで作品の増量に注いだのだろうなあと想像しています。マンガでは特にそうなのですが、巻末のお遊びや近況を毎度楽しみにしている身としては少々淋しい気も。ま、少数意見です。

 先に確認したので読了後にショックを受ける可能性はなくなりました。




 読みます。

 冒頭は主人公の家族に生じた不幸もあり、緊張感いっぱいに堅苦しく始められたもののそれ以降の伸びやかなこと!

 これは私の勝手な所感なのですが、ウェブ版は冒頭の方が完成度が高く、それ以降が荒削りと思いました。書籍版とは正反対です。

 この変化は現在の筆力で改稿を経たからと捉えています。あまり手が加えられていない冒頭に対し、大きく改稿されたそれ以降。この作品は2019年に描かれたものです。冒頭とそれ以降のコントラストはここ2年の作者さんの成長を如実に示しています。元から上手でしたのに、さらに腕を上げられました。


 主人公の章さん。この等身大の27歳は年上にやり込められる場面があり、そうだよね、難しいよねと共感すること多々でした。それが書籍版では改められており、章さんの編集者としての敏腕ぶりが強調されていて実に小気味よく読めました。


 次いでキャラクター。桃ちゃんはより活き活きと変わりました。新しく追加された人物達も良かったです。

 池田くんは私の新しいお気に入り、オタクに恋は難しいの尚ちゃんのイメージ。ちなみに元・完璧超人で今は人間くさくなった市長さんは寄生獣の広川市長でした。強面の山田さんはなぜか林家こん平さん。

 それで主人公の章さんは大泉洋さんでイメージしていましたが(;^ω^) もうだいぶよいお年になられてしまいましたものね。




 後ろに行くほど新規部分がすごく多いのです。端から端まで覚えてはいませんがそう感じました。ウェブ版とはいい意味で別もの。私が望んだ続編がまるでここにあるようで。ウェブ版で一度最後まで読んでいたのに三回も泣いてしまいました。眼福でした。


 以上で「ミュゲ書房」の魅力が少しは伝わりましたでしょうか。長くなっては苦痛でしょうからこれにて終わります。レビュワーの力不足は否めませんがこれはファンレター、作者さんは寛大な心でお許し下さるものと思います。

 伊藤調さんにとってのこの作品はリベンジなんかじゃなかったですよね。ミュゲとはスズラン。スズランの花言葉についての、劇中での言及にぴったりのお作品でした。

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