第51話 誰もが生きて語り出す
都築あきらが、夕方になると姿を消す観をためらいがちに問い詰める。
《最近、見ないんだけど、夕方。ねえ、何してんの? いっつも》
観はうろたえながらも、シラを切る。
《いや、別にいいだろ、出歩かなくたって》
ふくれっ面して、あきらは拗ねてみせる。
《いっつもさ、どっか行ってるじゃん》
そこで小菅総一郎が茶々を入れる。
《あきら見てんじゃん、観が夕方出ていくの》
追及にかかっていたのを、あきらは必死でごまかす。
《そういう意味で聞いてんじゃないんだってば!》
そのごたごたをいいことに、観は話をそらそうと無駄な努力をする。
《うっわー、バレた、恥ずかし~っ》
観にとってありがたいことに、小菅は調子に乗ってくれる。
《な、男には知られたくない秘密が……》
観を責めて嫌われたくないあきらはとりあえず、小菅に同調する。
《何よそれ、いやらしい!》
観も調子を合わせるしかない。
《だから悪い、小菅、これ以上は……》
そこで小菅は、話をそらすための長い長い冗談にオチをつけた。
《いや、正直に言え、そういう本を隣町まで歩いて買いに行ってますって》
もちろん下ネタのつもりだったが、あきらは身悶えして嫌がってみせたりはしなかった。
《山越えて?》
冷ややかなツッコミに、あっさりと小菅は寝返った。
《尾行られてんじゃん、観》
その裏切りに、観は半狂乱になって抗議する。
《え……おい、小菅! 墓穴掘ってんだろ! フォローになってないし!》
小菅の役割は、嫉妬に燃える幼馴染との間を取り持つ調停者にすりかわっていた。
《ダメだ観、もうごまかしきれん、諦めろ! あきらも頭冷やせ、こいつにはもう夜中に逢引する彼女がいる!》
どうやら、仲間を売って事態の収束を図ろうとしているようだった。
観は、最後の悪あがきという名の、無駄な抵抗を試みる。
《いや逢引って何だよ、いつの人間だよお前、っていうか彼女じゃないし!》
もっとも、あきらはそんな弁解など聞いてはいない。
《何よ、不潔フケツ不潔! 観のバカ! 変態! 大っ嫌い!》
泣きながら教室を出て行くあきらを観と小菅が止めようとする。ムキになって騒ぐあきらの前に担任が出てきて、騒ぎが大きくなる。暗転……。
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