第48話 ようやく物語が紡がれる

 パソコンの画面の中で、コート姿の羽佐間観が語り始めた。事件が起こってから何年も経った後の観だ。

 花道に下ろした旅行カバンに腰をかける。旅の思い出。出会った人々。旅に出るまでの生活。そのきっかけ。


《ああ、ここだここだ》


 廃屋の周りを歩き回りながらコートを脱ぐと、なぜかその下には学生服が。時は夕暮れ時に……。


《……声立てないで》


 いきなりドア枠を引っ張ってきた悠里が、その中に観を引きずり込む。(というか、ドアが移動する)


《な……》

《何をしていたの》


 悠里のバッテリーを含む怪しげな機械の中に座り込む観。


《いや、別に……》

《私、知ってる。普通の人、こんなとこ来ない。今だって、昔だって……》


 機械を眺める観


《昔って……何アレ?》

《……何だと思う?》


 じたばたする観。


《ごめんなさい、何だか分かんないけどゴメンナサイ、後つけました、もうしませんから、帰してください!》


 有無を言わさず問いただす悠里。


《名前は?》


 答える観を追及する悠里。


《は……羽佐間観(はざま かん)!》

《年齢! 性別! 生年月日!》

《17歳! 男! 〇〇年○○月○○日! ……て、男でしょ、見たら分かる……》

《所属!》

《○○高校2年○○組……て、何でそんなこと?》

 

 悠里は言葉を選び選び、たどたどしく答える。


《知ってた……ついてきてるの。だから、毎日行った……ガッコウ、に》


 悠里の姿をしげしげと眺める観。

 こんなかわいい子、うちの学校にいたっけ、とでもいうように。


《何年……何組?》

《ネン……? クミ……? わからない》


 戸惑う悠里に、不審げな顔をする観。


《うちの生徒じゃないの?》

《この時代の……人間じゃない》

《時代……人間?》

 

 そこで悠里は、自分の素性を一気に語りはじめる。


《私は、はるか未来から過去の風俗調査を目的として送り込まれたアンドロイド。あなた以外にもう一人、私に近づくものがいたら、私は壊れてしまう。だから、私のことは誰にも言わないで。言えば……》


 怪しげなメカの山が光を放つ。呆然とする観の前で、悠里はメカから充電を始める。


《バッテリーにも限りがある。私には時間がない》

 

 機械と悠里をかわるがわる眺める観。


《バッテリー? 時間?》

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