第18話 登場人物を「キャラ」と呼んではいけない

 そして再び放課後。

 かすみセンパイの待つ、選択授業教室。 

 僕はおずおずと、夕べA4のレポート用紙にかじりついて書いたプロットを差しだした。


「で、このキャラなんですけど……」

「登場人物をキャラ、キャラって言うな、うっとうしい」


 合いの手でも入れるかのようにダメ出しを繰り返すセンパイに、僕はいささか急いで「キャラ」を説明していた。生い立ちから性格、趣味、クセに至るまで……

 やっぱり徹夜して、マジメに考えてきたのである。今まで読んできたマンガや、見てきたアニメの知識を総動員して。


「ふ~……」


 長い長い説明だった。喋り終えた僕は、脳味噌の中身全てを絞りつくしたような脱力感に襲われて、ちょっとふらついた。

 センパイは、黒縁メガネの奥の眼を閉じて言った。


「別に座るなとは言ってない」


 嫌味だと取られたのか、本当に心配してくれたのか、それは分からない。どっちにせよ、足はふらついても踏ん張った。踏ん張らなければならない事情があった。


「いえ、あの……大丈夫です」


 選択授業の教室に行く前、トイレに入ろうとしたら「使用禁止」と書いてあった。他にトイレはなくもない。だが、遅刻はマズイので、とりあえず部活を優先した。

 説明終わってセンパイのジャッジを聞いたら、使えるトイレを探して走ろうと思っていたのだ。

 そして、かすみセンパイの判定は……。

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