25 史実と虚構のバランス

拙作『風琴ねずみと夜の電車』は、昭和10年の仙台が舞台なので、書いている間は、そのころの市民生活について、調べても調べてもまたなんか出てくる、という大汗な経験だったわけですが、そうしている間にも新しい史料見つけたり大間違いを見つけたりして、また繰り返し……


歴史物書いている方はみなさん、お勉強したことをそのまま書いてしまうと物語が死んじゃうし、というところで苦労されていることと思います。考証無視! って意外にかえってバランス難しいし。


児童向けの歴史ファンタジー、『騎士見習いトムの冒険』という作品があるんですけど。

著者は、モンティ・パイソンでおばちゃん役とか裸でオルガン弾いてたテリー・ジョーンズです。

彼は歴史学者でもありまして、この作品は中世が舞台です。


中世ヨーロッパのことなんて、今どきのお子さんは知りませんよ! ということで、作品冒頭が、背景の説明でかなりページを割いていて。ラテン語ができることのステイタス。教会の権力。いろいろ。かなり長くて正直へこたれそうになりました……


けれど、そこを乗り越えると、わくわくハラハラの冒険に引き込まれます。

しかし、面白いなあ、と思いながら、史実の著述と物語のバランスの正解って、なんだろうなあ、とも悩ましくなるのでした。同じくテリー・ジョーンズ著の『エリック・ザ・バイキング』、も少し読みやすいのになあ。


ちなみに残念なことに、テリー・ジョーンズは2020年に亡くなり、この作品も翻訳が2巻で止まっています。


続きはあるのでしょうか。なんやかんやで、ダブルヒロインの百合展開?!ていうところで終わっているのですが。

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