第32話 みかん

「あとひとり!あとひとり!」


葉月の心が踊ります。


「あとひとり!あとひとり!」


蜜柑の心も踊ります。

でも峰子がそれに釘を差します。


「それ、応援団が甲子園でやったら責任者が始末書を書くことになるからね」


「ええ……」


葉月と蜜柑がしょんぼりとします。

そんなふたりをみて峰子が言います。


「でも大丈夫!私達は軽音部だから!」


「おお!!!!」


葉月の目に輝きが産まれます。


「でも私達、甲子園であとひとりコールが歌えないってことですよね?」


蜜柑の目が暗くなります。


「ほら、違う歌を歌いましょう」


「……はい」


蜜柑の元気が回復しません。


「アイスクリーム食べない?

 私、奢っちゃう」


「……」


「ね?」


「しろいくま……いいですか?」


「え?」


「しろいアイス……みかん入っているアイス」


「いいけど、それだったらガッツリみかんでもいいんじゃ……?」


すると葉月が提案します。


「みかんアイス選手権をしない?」


「おお!!?」


蜜柑のテンションが上ります。


「軽音部の始動は、みかんで始まるのだ!」


葉月の言葉に蜜柑は釘付けです。


こうして軽音部の第一歩はみかんからはじまるのでした。

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