第938話

「あー、ミミウ殿!狡いですぞ!自分にもとっておいてください!」


「ん。ミミウずるい‥リルまだ斬ってない‥」


ミミウさんに続いて、アレカンドロとリルも敵に突っ込む。


おいおい君たち‥


仕方ない、蹂躙してしまいなさい。


ミミウの攻撃で土の精霊を纏っていたエルフが吹っ飛ばされる。


おや?


纏っていた精霊がエルフの元を離れてミミウの元に駆けていく。


「お、おい!お前は俺の精霊だぞ!敵に寝返るな!」


う〜ん‥


多分君の所にいるよりも、ミミウさんの所にいた方が楽しそうだったんじゃないかな?


「後で一緒にお腹いっぱいご飯を食べるです!」


ミミウが土の精霊とおかしな会話をしている‥


そのご飯を作るのは誰でしょうか‥



水の精霊を纏っているエルフが精霊術を使おうと構える。


そのエルフの横を一瞬でリルが駆け抜ける。


「ふっ‥あんしんして‥みねうちじゃ‥」


「ぐぼっ!」


エルフが胸元から出血してそのまま崩れ落ちる。


あれ?


リルさん、峰打ちって知ってますか?


あやめのやつ‥


中途半端に教えやがって。


あんななんちゃって侍なんて恐ろしくて敵わんわ!


「はっはっはっは!どうした!その程度か!次はもっと強くいくぞ!耐えてみせるのだ!」


うんうん。

ここでもアレカンドロは通常運行ですな。


瀕死になったエルフの頭からポーションかけて復活させている。


何かエルフたちが可哀想になってきた‥



「な、なんだというのだ!赤髪の女だけではなく、何故他のやつらまでここまで強い!いったい何者なのだ!ただの人族ではないのか!」


残念でした。

多分俺が必要ないくらい、みんな強いんです。


そして俺とアキーエ以外は人族でもないしな。


「ええい、何をしている!今の状態で届かないのであれば【精霊纏】を次の段階に進めぬか!」


「いや、しかしそうなれば戻れるものが何名いるかわかりませんが‥」


「構わぬわ!これで我をなくすようであれば最初からその程度だったと言う事だ!さっさとせぬか!」


「はっ。」


女王の側にいた男は意を決した表情で周りを見渡す。


「各人【精霊纏】を『纏』から『擬霊化』に進行させよ!」


「承知しました!」


エルフたちは男の号令によりその場で何かに集中しだした。


何をする気だ?


今まで使用していたスキル【精霊纏】に次があるという事なのか?


エルフたちを注意深く見つめる。


すると今まで纏っていた精霊が徐々にエルフたちの身体の中に浸透していくように見える。


「がっ、ががっ!」


何人かのエルフがその場で膝をつく。


膝をついたエルフたちが纏っていた精霊が身体に吸い込まれるようにして消える。


「がぁ!」


膝をついていたエルフたちが、急に立ち上がり側にいる者に攻撃しだした。


俺の近くにいたエルフも突然襲いかかってきた。


目が正気じゃない‥?


攻撃も出鱈目だ。


あんな遠方から腕を振りおろしても、躱してくれと言っているようなものだ‥


俺はその場で身体を半身動かし、攻撃を交わす。


エルフの攻撃が俺の横を通り過ぎ‥



突然男の腕から炎が噴き出した。


「うおっ!」


俺は驚き、タタラを踏むように後退する。


あ、危なかった。


正気じゃなかったみたいだから追撃されなかったけど、なんだったんだ一体‥


俺は男に視線を戻す。


男はゆらゆらとゆらめくように動きながらこちらに向かってきている。


揺れるたびに男の身体から炎が漏れるように溢れ出す。


精霊を‥取り込んだ?


男は炎を噴き出しながら、こちらに向かってきた。


俺は男に向かって剣を抜いて斬りつける。


男は剣を避けようともせずに突っ込んでくる。


剣は男を斬り裂き、浅くない傷をつける。


しかしその傷は血を流す前に焼かれ、その場所から炎が噴き出した。



ふむ。

なるほど。


エルフと精霊の中間のような存在になったという事か‥?


精霊であれば剣撃は効かないはずだ。


しかしこいつは剣が通じはしたが、致命傷にはなりきれない。


厄介だな‥


しかし偶々だが相手が相性がよかったようだ。


俺はエンチャント:穿つ者を発動して魔力を練る。


「大地よ凍れ!『氷結弾』!」


俺の放った氷の弾は、炎を噴き出しながら進んでくるエルフを氷漬けにする。


厄介な相手だが、この程度なら問題ないな。


俺は周りを見渡す。


「意識ある者は俺に続け!敵を殲滅する!」


なるほど。


意識を保ったままこの状態になるのが正解だって事か。


ここからが第二ラウンドってとこか‥







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