第916話
「それで?そのダンボール・カネンブツさんが何のようだ?不燃物として、こいつらを持ち帰えるために来たとか?」
「ダンボール・レイノネンだ!なんだ、そのカネンブツやフネンブツとやらは?何故か馬鹿にされた気がするぞ‥まあいい。我々の目的は貴様の言う通り、その者達を預かりに来た。」
は?
人族は生きては返さん!みたいに襲いかかってくるんじゃないのか?
「ダンボール様!何をおっしゃってるんですか!この者達をすぐに皆殺しにするべきです!」
「ふむ。確かにその通りだとは思うが‥お前たちの状況から見て、同程度の人数にやられており、しかも人族は手傷すら負っておらん。よほど巧妙に罠を仕掛けられたのだろう?お前達がかかった罠だけではないかもしれん。この場で戦うのは分が悪いようだが?それともお前たちが実力で負けたのか?そうであれば我が軍の全力を持って討ち滅ぼさねばならぬが‥?」
「そ、それは‥そ、そうです!あの赤髪の女が人族ではありません!別種族であるはずですが、それを隠して我らに近づいてきました!化け物です!」
またお前は‥
自分が理解できない相手を化け物よばわりは酷いと思うぞ。
アキーエさん怒ると大変なんだからな。
段ボールとかすぐ燃えるぞ。
「ふむ。なるほどな‥薄汚い人族の中にも、時々特出した者がいるそうだ。我が愚弟が言っておった。その人族は美しく輝いていた‥とな。そのような人族などいるはずがないと言ったが、あの愚弟は聞きもしなかったがな。お前もその部類か?」
美しく輝いていた‥
何か寒気がするんですけど‥
もしかして変態の関係者ですか?
「ふん。まあいい。罠ごとお前達を始末してもいいが、それだと同胞や木々まで傷つけてしまうからな。当面の目的は果たした。我らが同胞をそのまま返すのであれば、お前達を無事に返してやろう。」
商人たちが持って来た武具類に目を向けると、すでにエルフたちが確保して持ち帰る準備をしていた。
そうだな‥
キリーエの兄貴たちがいるから俺たちもできれば大きな戦闘は避けたい。
これだけ敵が多いと、全てを守れるか心配だからな。
武具類を持っていかれるのは、商人たちにとっては痛いかもしれないが、高い勉強代と思ってもらおう。
「俺たちは別に構わない。最初からその条件で、そっちのエルフとは話をしていたしな。」
「そうか。ならばその者たちを引き取らせてもらう。」
エルフの数人がこちらに向かって歩いてくる。
そして負傷しているエルフたちに肩を貸して連れて行く。
「くそが‥王弟でなければ意地でも戦わせたものを‥その性格のせいで第三師団などと末席に座らせられているのがわからんのか‥」
負傷したエルフの中で、1番偉そうだった奴が何やらぶつくさ言っている。
王弟‥?
末席に座らせられた‥?
エルフは国という一つの生き物として他の国に戦争を仕掛けてるんじゃないのか?
もしかして一枚岩じゃないのかもしれないな‥
「ふむ。てっきり隙を見て襲撃してくるかと思ったが、そうではなかったようだな。薄汚い人族にしては真っ当だったようだ。」
薄汚い連発するな。
燃やすぞ、段ボール。
その時段ボールの目が鋭さを増した。
「しかしこれだけの人数のエルフに囲まれて、全く動じた様子がない。お前たちは危険だな。このまま別れては厄介かもしれん。我らエルフが人族如きに脅威を感じる事はないと思うが、後顧の憂いはたっておくべきだろうな。お前たち人族との約束を守る必要もあるまい。」
ん?
何かする気か?
ちっ!
少しはまともなやつだと思ったが‥
「これで死なないようであれば、次は油断などせず全力で相手をしてやろう。『水の上位精霊よ、濁流をつくり敵となる者を流し破壊せよ。水龍顕現!』」
段ボールの前に三体の水龍が姿を現す。
まずい!
広範囲の精霊術か!
商人たちが散らばっている状態では‥
そう思い周りを見渡すと、仲間たちが散らばってる商人たちの元に移動をしていた。
水龍が爆発し、大量の水が殺意を持って襲ってくる。
俺は近くにいたキリーエの兄の元に向かい、エンチャント:穿つ者を発動する。
「氷の意志よ、我の前に凍てつく息吹を『氷結界』!」
俺は目の前に迫る大量の水に氷魔法をかける。
迫り来る大量の水は凍りつき、水を防ぐ氷壁になる。
あの野郎。
もしかして変態の兄弟かもしれないし、戦争反対派なのかもしれないと思って油断した。
かなり長い時間、大量の濁流が流れた後には水龍もエルフ軍もその姿を消していた。
さすが騎士団の師団長だな。
確かに変態を超えるほどの精霊術だ。
だがお前は俺の仲間を舐め過ぎだな。
「みんな無事か?」
周りを見渡すと、それぞれが散らばった商人たちを守るように位置どりして濁流を防いでくれたようだ。
アキーエたちはもちろん、正人たちも動いてくれている。
さて、これだけの事をされたんだ。
第二戦はこちらから仕掛けさせてもらうからな。
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