第902話
村に戻り、オークたちを討伐した事を伝えた。
オークエンペラーという最上位種が自分たちの近くにいた事がわかり、村人たちは自分たちが無事にいられた事を女神に感謝していた。
タルタルお供えするといいですよ。
村人たちは口々に感謝してもしきれないと伝えてきた。
「気にしないでください。困っている人を助けるのは、『閃光ヘッドの勇者』であるガッツォさんの生き方なので。」
あ、色々混じってしまった。
まあ同じようなもんか。
村人たちは勇者と呼ばれたガッツォさんを見る。
村人のほとんどが目線が頭で止まってたけど‥
「本当にありがとうございました。私達が準備した報酬でオークエンペラーを倒していただけるなんて‥僅かしか出せませんが、本当に追加報酬はいらないんですか?」
若い女性が話しかけてきた。
彼女がタールさんの知り合いの人でメリアさんだ。
「いや、大丈夫だよ。タールさんと約束したし、それにオークエンペラーの素材だけで充分な金額になるから。あ、そうだ。」
オークエンペラーはお肉はもちろんの事、皮や牙などお金になりそうな物は持って帰る事にした。
『スペース』の事を知ったモブキャたちが、何としても持って帰ってくれとうるさかったからな。
俺は『スペース』からオークを取り出す。
オークはオークでもオークジェネラルの方だけどな。
「オークジェネラルなんだけど、よかったら村の資金にしてくれ。」
「えっ!?こ、これを!」
驚いているみたいなんだけど、若干引いてるのが気になる。
「あ、ありがとう。オーク達を退治してくれただけじゃなく、こんな事まで‥本当に感謝しても感謝しきれないわ‥」
「構わないよ。『閃光ヘッドの勇者』の伝説が始まった土地なんだ。そのうち観光客とかも来るかもしれないからな。今のうちに整備しといてくれると助かる。」
観光客は冗談だが、せっかく助けた村が貧困で立ち行かなくなるのは見たくないしな。
オークの村を討伐するのにあれだけしか報酬が出せないのであれば、決して裕福ではないだろうからな。
「わかったわ。ありがとう。このモンスターの素材を売って、村おこしのために『閃光ヘッドの勇者』の商品を準備しておくわ。」
いや、そこまでしなくて‥
あ、目がマジだ。
すまん、ガッツォさん。
カーロッタの時みたいに辱めにあうかもしれません‥
アースンに戻り、タールさんにオークの討伐が完了した事を報告する。
ギルドへの報告にはガッツォさんに行ってもらった。
「お兄さんありがとう‥よかった‥お兄さんも勇者さんも強いのね。これからアースンに来たら、うちの店に寄ってよね。お代もいらないし、最高のおもてなしをさせてもらうわ。」
あのフーラさんと本当に血が繋がっているのだろうか‥?
あまりにも普通の人で訝しんでしまうぞ。
「感謝するなら、『閃光ヘッドの勇者』ガッツォさんにしてくれ。俺は少し手伝っただけだからな。」
「『閃光ヘッドの勇者』ガッツォさん‥わかったわ。うちの店にも素晴らしい人だって掲示しておくわ。」
ふむふむ。
アースンの宿ならいろんな人が目にするだろう。
ふっふっふ。
これで三勇者が揃って、俺の存在がますます希薄になっていくだろう。
タルタル教はちょっと手をつけようがなくなってきたけど、これ以上目立たないように矢面に立つ人の準備が出来たぞ。
待ってろよ、魔王さん。
アースンから王都により、3日ほどバーントさんを冷やかして獣人国に旅立つ事にした。
もう少しゆっくりして行ってもよかったのたが、バーントさんから気になる事を聞いたからだ。
いつものようにバーントさんとサシで酒を飲み交わしていた時、何度見てもこの顔がギルドの受付にいる事を不思議に思っていると、バーントさんが身内の話を始めた。
「俺の友人の事なんだが‥あ、キリーエの親父の事なんだけどな。子供の事で困ってるみたいでな。キリーエの兄貴の事なんだが、自分の実家の商いじゃなく別の商いで成功しているらしいんだが‥」
「キリーエの兄貴?確かアルトスだったけか?別の商いで成功してるならいいじゃないか。何が気になるんだ?」
「友人は食べ物の仕入れ関係の商いをやってるんだが、その息子はポーションや魔道具、武器類などをどこかの国と戦争でもするんじゃないかって量を取り扱ってるらしい。」
「そりゃ物騒だな。だがその程度の事気にする必要もないと思うが‥」
あの兄貴の過激な性格から考えて、武器商人の道もありと言えばありな気がするぞ。
「そうだな。ただ武器を取り扱ってるだけならいいんだろうけど‥その取引先がどうも他国みたいなんだ。」
ふむ。
確かに自国の武器を他国に大量に売るのはな。
相手が商人であれば商売って事にもなるが、国が相手であれば量によっては反逆罪とかにもなるんじゃないのか?
まあ相手の国にもよるだろうけど‥
「しかも相手がエルフの国ってのが、また問題でな。」
う〜む‥
確かにそれは少しまずいかもな‥
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