第897話
俺は秘密基地で色々な魔道具を作った。
俺の膨大な魔力とスキル【創造士】を使い、普通では想像は出来ても作る事は不可能だった物まで創り出す事ができた。
様々な魔道具を創ったが、もちろんメインとなる魔道具は勇者たちの装備だ。
魔王と、見え隠れする『あのお方』とやらと戦うために、高性能の魔道具が必要だった。
俺は『魔道具の勇者』であるラケッツさんは全身に魔道具を纏い、さらに魔力による遠隔操作や近距離戦での爆破など俺と卓が想像出来る最強の魔道具でその身を包むことにした。
そして『異世界の勇者』である正人たちは、この世界に召喚された際に勇者となるべきスキルを与えられている。
それを活かすために、それぞれの得意とする武器や戦術のために必要な魔道具を創った。
正人に関してはその他にも機能を搭載しているがな!
そして俺はラケッツさんと正人たちの装備を創った時に、どうしても『もう1人の勇者』であるガッツォさんに装備を創りたくなったのだ。
異世界から来たわけでもなく、魔道具を使い出したら性格が変わるわけでもない。
普通にこの世界で生きる男だ。
ただ、その精神は強く肉体的にも強い。
弱いのは頭皮だけだ。
俺は冒険者の中で彼を1番尊敬している。
俺が初めて王都で依頼を受けようとした時に注意してきた事‥
あの時はアキーエと絡まれたんだとばかり思っていた。
そして冒険者なりたての人たちを護るために依頼を受けたり、依頼者の事まで考えて行動している。
勇者のように女神様からスキルをもらったわけではない‥
それに誰かのように魔道具を扱えたりしない。
しかし俺は正人のように異なる世界から来た勇者だけじゃなくて、この世界を生きる勇者にも共に世界を救ってもらいたいと思っている。
だとしたら俺はそれがガッツォさんだと思う。
だから俺は『スキンヘッドの勇者』であるガッツォさん用の武器も創った。
ガッツォさんの防具は特に創らなかった。
ただ、不条理に勝つために武器を渡したかったのだ。
不条理に勝つためには‥
やはり爆炎でぶった斬るのが1番でしょう。
目をつけたのは、ラケッツさんの鎧にも使ったガスだった。
このガスを燃やす事で高火力の炎を生み出し、敵を攻撃するのだ。
使うガスはノームたちにもらった鉱石から加工する。
今回使うのはおよそ3,000℃以上の熱を作る事が出来るアセチレンガスという物だ。
アセチレンガスは炭化カルシウムに水をかけることで、アセチレンと消石灰が発生する。
そしてアセチレンに含まれる不純物を取り除いた後に、アセチレンを圧縮する。
圧縮してケイ酸カルシウム固形物に溶剤を浸透さて完成となる。
そのままだと空中に霧散してしまうので、ガスを剣の柄に充填させ、必要時に風魔法の回路でガスの放射を調整して剣に炎の刀身を作り出すのだ。
もちろんガスは柄の中で作り出せるようにしているので、長期間の使用にも耐える事が出来る。
本当は光の剣の完成形を渡したかった。
光で剣を形どり、通常の剣では防げない上に遠距離では光を銃のように放つ事ができるような武器だ。
だがそれを作るにはプラズマを操作する必要がある。
特殊な粒子や強力な磁場を発生させる必要があり、今回は作る事を断念した。
しかし諦めた訳ではなく、今も卓と共に実現に向けて取り組んでいる。
そう遠くない将来作り出す事は出来ると思うが、今回はその過程で創る事が出来た、名付けて『全部燃やし斬ったれ炎剣君』を渡すことにする。
炎の刀身は物理的な物で防ぐ事はできないが、砲弾のように放射する事はできない。
唯一できる事は放射するガスを調整して刀身を伸ばす事くらいだ。
まあ伸ばす長さとしては10メートル程になるため、範囲内にいる敵に関しては丸焦げにする事が出来るとは思うが。
「うっ‥お、俺は‥」
ガッツォさんが意識を取り戻したようだな。
「ガッツォさん、大丈夫か?」
「お、お前はマルコイ?マルコイか!な、なぜここにマルコイがいるんだ?」
「ガッツォさん、質問は後だ。オークの最上位種のオークエンペラーが出た。ガッツォさんも協力してもらっていいか?」
「なっ!?オークエンペラーだと!そんな伝説上のモンスターが出るなんて!マルコイ!それとモブキャとラタチ!急いで逃げるんだ!俺が殿を務める!早くするんだ!」
一度死にかけても、自分より他人を優先させる。
そんなガッツォさんを救えてよかった。
それにしても変わってなくて安心した。
もちろん眩しい頭も。
「ガッツォさん、おそらく逃走は無理だ。オークの村を半壊させたからな、奴の怒りの矛先は俺たちに向いている。撃退させるしか方法はない!」
「くっ!わかった、俺が前に立つ!お前たちは遊撃してくれ!モブキャ、ラタチ!お前達はなるべく離れていろ!」
「兄貴!俺達も戦うぜ!兄貴を先に死なせるわけにはいかねぇ!」
「今はそれどころじゃ‥‥くそっ、死ぬんじゃねえぞ!」
いや、ガッツォさんも君たちも死なないけどね‥
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