第891話
「それではわたくしなぞがタルタル神様のお考えを聞くのも不肖とは思いますが、アースンにはどのような布教でいらっしゃったのでしょうか?」
どのような布教って何?
そんなに種類があるんですか?
「いえ、獣人国に戻ろうと思って通っただけです。すぐにこの街を立つ事になると思います。」
「なるほど。獣人国から更に奥に進まれ、もっともタルタル教が広まっていない大陸の端を目指されているのですね。」
何故そうなる?
俺はただ平穏に暮らしたいために獣人国に戻るんですよ‥
「ま、まあ‥」
「ああ!さすがタルタル神様!わたくしなど、タルタル神様が引かれた道をただただなぞるばかり。いえ、わたくしはタルタル神様の期待に応えられていません!もっと、タルタル神様が引かれた道以上にタルタル教を広める必要があります!ありがとうございます、タルタル神様。タルタル神様のおかげで今の自分がどれだけ未熟かわかりました。」
も、もうだめだ。
この人は話が通じる気がしない‥
「と、ところでフーラさん‥できれば俺を呼ぶ時に、タルタル神ってのはやめてもらってもいいですかね‥?」
こんな大通りで、大きな声でタルタル神を連発されると流石に目立つ‥
すでに結構な数の人が立ち止まってこっちを見ている‥
「なっ!タ、タルタル神様の御名前を呼ぶなと‥はっ!そうでした‥今現世にいらっしゃるタルタル神様は、マルコイ様という依代で顕現されているのでした。承知いたしました。タルタル神様の名でタルタル教を広めるのではなく、あえてマルコイ様のお名前で布教していくわけですね‥わたくしもマルコイ様にタルタル様に愛されるように、すぐに布教に行ってまいります!」
そう言ってフーラさんは駆け出して行った。
その走り去るフーラさんに追従するように1人のハゲが走り出した。
あ、あれストーカ‥間違えた、あれってメンセンじゃね?
確かフーラさんに恋心を抱いていたと思うが、すっかり信者と化していたか‥
あれはタルタル教の信者と言うか、フーラさんの信者だろうけど‥
てかタルタル教自体フーラさんの作った宗教のような気がするんだが‥
まあいい。
できればもう2度と会いたくないが‥
多分‥いや、絶対また会う事になるんだろうな‥
さて、1番の脅威が過ぎ去ったので安心してアースンに泊まる事にしよう。
下手に今から出発して、フーラさんに会うのも恐ろしいし。
多分あのスピードからして、もうかなりの遠くには言ったと思うけど。
まさかあれだけの勢いで走って行ったんだ、まさか戻ってくるような事はないだろう。
「あれ?」
「ふおっ!」
「お兄さん、オープン前に来てくれた人じゃない?」
俺は振り返り、声をかけて来た人をまじまじと見る。
先程物凄い勢いで街を駆け抜けて行った人によく似ている。
似ているが、目には狂気のタルタルは浮かんでおらず、どことなく理知的な感じがする。
「もしかしてタールさんですか?」
びびった。
姉妹だからだろうか?
あまりにも声が似ていた‥
「ええ、そうです。一度しかお会いしてないのに覚えてらっしゃるなんて嬉しいですね。」
ええ。
貴方が彼女の妹でなければ覚えてなかったかもしれません。
彼女の妹なのに常識人だった事に驚き覚えておりました。
しかしあれから少し月日が経っている。
もしかして彼女も‥
「お久しぶりですね。どうですかお店は?」
「それがですね‥姉から預かっていた御神体?ですかね?あれがとても大事な物だったみたいで、そのおかげで店が御神体を祀る場所になってしまったんですよ。人がたくさんくるのは嬉しかったんですけど、店の中でいきなり拝みだしたりする人がいて‥他のチキン南蛮を食べに来た人の邪魔になるので、御神体をその場所に残したまま、お店は違う場所に移す事にしたんですよ。」
おお!
何と言う事だ。
彼女の妹なのに、やっぱり常識人だった。
そうだよね。
普通タルタルを神格化するなんて非常識だよね?
「どんな神様を拝むのは自由ですし、タルタルソースは確かに神様が作ったと言っても過言ではないソースです。でもタルタルソースは拝むんじゃなくて食べて欲しいですよね!」
むむ‥
神様が作ったと言ってものくだりは少し気になるが、まあいいだろう。
「確かにそうですよね。せっかくだからタールさんのお店のチキン南蛮を食べたいと思うんですが、お店はどこにあるんですか?」
「店は食品街の端っこになります。宿と一緒になってるので、宿に泊まっていただく人には格安で提供してるんですよ。もしアースンに泊まって行かれるならどうですか?確か少し割高になりますけど、一部屋空いてたと思いますから。」
それは助かる。
割高と言うのは気になるが‥
「それはありがとうございます。是非お願いします。」
「わかりました。宿に着いたらタールの紹介と言ってもらったら大丈夫です。私は今から冒険者ギルドに行くところなので、それが終わったら戻りますので。」
冒険者ギルド?
----------------------------------------------------------------------
〇読んでくださった方へ
よろしければ、星をポチッとしていただけると、とても嬉しいです。
今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひよろしくお願いします~!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます