第890話
「お?兄ちゃん、ミミウさんの事が気になんのかい?すげーだろこの娘。ちっちゃいナリしてどこに入ってんだってくらい食べるからな!ほとんどの店の大食い大会は優勝してるし。もう今は殿堂入りしてて、大会も誰が1番食べるのかというよりもミミウさんに挑戦!みたいな大会になってるからな!」
何してるんすかミミウさん‥
「いつも大会当日にフラッとやって来て、優勝しちまうんだ。何度も優勝してるから、おそらくこの街に住んでるんだろうと思うんだが、誰も住んでる場所を知らない。それにこの街のお偉いさんとも知り合いみたいだしな。そんな謎の多い娘だから、この街では凄く人気があるんだよ。」
ま、まあ目的があって行動してる時以外はみんな自由に過ごしてるからいいんだけど、獣人国からここまでかなり距離があるよな‥
多分、精霊の力を借りてここまで来てるんだろうけど。
ミミウなりの『転移』で『精霊の抜け道』ってところか。
あまり深くは考えない事にしよう。
思考の迷路にはまってしまいそうだ‥
「あ、ありがとう。ところでどこかいい宿はないかな?俺たち今日着いたんだけど、ここで一泊して王都に行こうと思ってるんだ。」
「ああ、それだったら食品街の奥の方にある、神殿の近くにいい宿があるよ。」
「神殿?」
「もともとその辺も食品街だったんだが、聖物が置いてある店があってな。その店が宗教の認定を受けてそれを祀る神殿になったんだ。最初はその店だけだったんだけど、周りの店も自分の店を使って欲しいって要望があって、かなりの大きさの神殿になったんだよ。」
「そ、それって元チキン南蛮のお店だったりしますか?」
「おお、よく知ってるな兄ちゃん!元々看板には『タルタル教アースン支部』って書いてあったんだが、まさかあそこまで大きな神殿になるとは思わなかったけどな。そこに飾られてる御神体もタルタル神様が実際に手がけた物って話だよ。まあそれは本当かどうかわからないけどね。」
自分がタルタル神だと認めたくはない。
だが、もし俺がタルタル神と思われているのであれば、それを作ったのは俺です‥
なんてこった。
やっぱり彼女はこの地に降り立っている。
やばい。
ここも安全とは言い難い‥
せっかくショッピングモールに来たが、ここには泊まらずに先に行くべきだろうか‥?
この店のおじさんの話では、まだおじさんは改宗されていない。
神殿は出来ているが、街の人の洗脳は終わっていないと思われる。
ならばこの街にいる確率が高いのではないだろうか?
「卓にラケッツさん。悪いけど、このままこの街を‥」
「そのお声は!」
ま、まさか‥
「タ、タルタル神様っ!」
大きな声で、人が聞いたら誤解しそうな名前を叫びながらこちらに駆け寄ってくる女性がいる。
ひ、ひぃ!
やばいどうする!?
ここから『転移』で逃げ出す?
いや!
ここまで放っておいた俺の責任なんだ。
ここで彼女と対面して俺は神なんかじゃないと、崇められるのは迷惑だと伝えるべきだ。
「フーラさん。久しぶりですね。」
「ああ!タルタル神様!私めの名前を覚えていていただきありがとうございます!」
ええ‥
何か前会った時よりも拗らせてないですか?
「い、いや、フーラさんの名前を忘れるわけないじゃないですか。ところでさっきから言われているタルタ‥」
「ああ、なんと素晴らしい事でしょう!タルタル神様が私の名前を覚えていらっしゃる。それだけでこんなに幸せな気持ちになれる。やはりタルタル神様は偉大な神様です。タルタル神様が現世にいらっしゃる間にタルタル神様の素晴らしいさを世界に伝え、その素晴らしいタルタルの世界を全種族で作り上げ敬い奉ります。そうすればこの世界にはタルタルが満ち溢れ、戦争などなくなりタルタル神様がタルタルであるべき世界としていただける。そんな世界にタルタルが‥」
やばい。
本格的にやばい。
すでに何を言ってるのかわからなくなってきている。
これが神界おられる神様であれば何を言われようが、多少教えが捻じ曲がっていたとしても気にならないとは思う。
だけどフーラさん俺のことを言ってるよね?
普通の人族がどうやって世界をタルタルで満たせるんですか?
「フーラさん、誤解があるようですが‥」
「ああ、タルタル神様!なんでございましょう!」
「えっと‥‥‥エルフェノス王国と獣人国は俺がいるから大丈夫です。フーラさんは東にあるアルラント王国の方をお願いします‥‥」
「ああ!何と素晴らしい事でしょう!タルタル神様より直接神託をいただけるとは!承知いたしました!わたくしフーラが命に変えてもアルラント王国方面の国にタルタル教を布教させてみせます!」
いや、無理だって!
こっちを見てる瞳の中からタルタルソースが出て来そうな勢いなんですもの!
ど、どこかで少し躓いてくれる事を祈るしかないと思ってしまったんだもん‥
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