第887話
ラケッツさんの鎧は少し手を入れて実戦、手を入れて実戦としていく事で何とか形になった。
ラケッツさんが真っ白になって座り込んでいるが、まあ必要な事だったという事で‥
勇者たちの装備についてはあやめと恵の装備は完成した。
あやめが使っているのは槍だったから、割と早めに思いついていた。
槍で攻撃した際に、槍の穂先が衝撃を受けると前面に電気を走らせるものだ。
本来雷の魔法というものは単体では存在しておらず、魔力回路で作ることはできない。
しかしまあ俺の【創造士】であれば問題なく電気を作る事ができる。
槍の中に水の魔力回路を作り、それを冷やす事で氷を作る。
それをぶつけ合う事で槍の中に静電気が溜まっていく。
帯電した電気は槍が衝撃を受けた際に電気が抜ける穴を作り出す事で電気を放出する。
それは雷となって穂先にいる相手に向かい強大なエネルギーを放つ攻撃になるというわけだ。
槍の持ち手は絶縁物質を使用しているため、槍自体を触らなければ感電しないし、もし触るとしても絶縁の手袋をしていれば問題ない。
かなり強力な武器ではいるのだが‥
まあ爆発しないので、あまり面白味はない。
恵に関しては、聖魔法の範囲拡大と威力の増加だ。
魔力回路で魔法を増強する事で少ない魔力でも威力の高い魔法を放つ事ができる。
もちろん少ない魔力で高い効果を得られる以外に、魔力を込めれば込めるだけ増強してくれるので、恵くらい聖魔法を使える者が扱えば死にさえしなければ四肢の欠損すら元に戻すだろう。
これに関しても爆発どころか、攻撃もできないので製作者としては物足りない‥
まあ2人とも鎧は面白いものにしてやろうと思う。
正人については魔王を倒すべき勇者だからかっこいい装備にしてやろうと思ったんだが、人生謳歌者にかっこいい装備を渡すと俺の精神衛生上悪いので、ちょっとトリッキーな武器にしてやろう。
構想はできているので、あとは時間をかけて創り上げていこう。
ラケッツさんの鎧と同じで、それぞれオーダーメイドの魔道具だからかなり魔力を持っていかれるからな。
ラケッツさんも鎧は完成したが、武器がないので追加作成していく。
武器は光属性の武器だが、ただ剣を渡すだけではおもしろ‥‥魔道具の勇者とは言えないだろう。
ちなみに鎧の自動起立式爆弾については、魔力を流す事で作動するようにした。
そのままでもよかったが、休もうとして座り込んだラケッツさんが強制的に立たせられて涙ぐんでいたのをみて、少しだけ胸が痛んだからな。
後は鎧の上から装着する魔道具を作っていくことにする。
飛べるのは勿論のことだが、魔道具の勇者たる象徴の『アシュラ君』をバージョンアップさせようと思う。
今まで6本腕で相手の攻撃を防いだり、装着者の攻撃に追加攻撃をしていた『アシュラ君』だが、攻撃範囲を広げるために腕ではなく違うものにするつもりだ。
『アシュラ君』のバージョンアップを考えている時に、卓が「これは自動迎撃用の装備になりますよね?手だと迎撃範囲が決まっていますが、別の形にすればもっと範囲が広がるんではないでしょうか?」の言葉が決めてだった。
最初は何を言ってるんだと思ったよ。
『アシュラ君』は異世界の神様からヒントを得た超自動迎撃式魔道具だ。
手の長さを伸ばせばお互いが邪魔になり、最悪絡み合う事になってしまう。
だからそうならないような最長の長さが、丁度手の長さと同じくらいだったのだ。
そりゃ『アシュラ君』を作った時に、迎撃範囲を広げるためにものすっごい長い手を作ったよ。
でも絡み合うのもそうだが、手の動きに対する反動が大きく、装着者が振り回されるのだ。
まあ今の時点でも振り回されている事についてはご愛嬌だが‥
しかし少し考えてみると、意外なことがわかった。
それは‥
卓が言った通り、別に手にする必要が無いことだ。
自分で言っておきながら、何か間抜けな感じがするが、手ではなく別の何かにして『アシュラ君』から切り離せばいいのだと。
自動で迎撃する物が装着者の身体から離れて、自分の敵対する相手の元に向かうか、自分の周りを移動しながら発見次第迎撃に向かう。
つまり魔力で繋がれた、広範囲迎撃用決戦魔道具というわけだ。
俺が創ろうとしているのは、背中に背負える程度の箱型の魔道具で、それに魔力を通せば分離して迎撃行動を行う物にするつもりだ。
これなら『アシュラ君』を担いで回る必要もないし、いざという時でもすぐに魔道具を使う事ができる。
魔力で装着者と魔道具を繋げるのは割と簡単に出来た。
感覚的には魔法を発動させた後に、その場に留まらせるような感覚だ。
それで自分と魔法が繋がっていて、魔法を放つように指示をするとそれから魔法が放たれる。
これを魔道具に応用して自律して空中を移動する魔道具を創っていこうと思う。
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